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近年、空き家の放置が問題となっています。空き家を放置しておくと猫などが棲み着く用になり、近隣に迷惑を掛けることもあり得るからです。…猫が棲み着いて増えてしまうと、追い出すことも難しく、仮に処分と言っても、動物愛護上、望ましくはありません。

ただ、ある人は「猫くらい問題は無い」と言うかも知れません。しかし、問題が「火災」の発生となったらどうなるでしょうか。実は空き家は火災発生の原因にもなり得るのです。

そこで、ここでは空き家の火災発生について、発生原因の例から責任の所在などまで解説したいと思います。

 

意外に危険な空き家の放置

 

空き家の放置は意外に危険です。


ここでは、空き家が放置されると、どの様な状況を招くかについて取り上げてみます。

 

 

実は放火が頻発している

空き家はそのまま放置するならば、荒れ放題になってしまいます。建物の老朽化は進み、庭は草が生い茂ることでしょう。その結果、誰かに貸すにしても売るにしても、難しくなってしまいます。仮に誰かに貸すことにして、リフォームを検討したとしても、採算が合わない事態もあり得るのです。

さて、消防庁の統計を見るならば、放火と放火の疑いのある火災の件数は年間4,000件を超えます。決して馬鹿に出来る数値ではありません。そして、放火は火の気の無い家屋であっても十分に発生します。つまり、空き家であったとしても、火災は他人事では無く、自分の負うリスクと考えなければならないのです。

 

【参考URL】

https://www.fdma.go.jp/pressrelease/statistics/items/210514_boujyo_1.pdf

 

実例から見る「不良少年の火の不始末」

ちなみに放火で無かったとしても、出火の原因はあり得ます。実例を紹介しましょう。

これは、弁護士に寄せられた相談。空き家の火災の損害賠償の問題の件です。

 

【相談の概要】

ある人が実家を離れて生活している人、実家は木造で空き家の状態でした。

ある日、その人に実家のある地域の消防団から連絡がありました。連絡の内容は、実家が火事となり、近隣に延焼したと言うもの。調査したところ、現場からタバコの燃えカスとライターが見つかり、火の不始末と考えられる…とのことでした。

さて、

それでは、空き家の持ち主として、仮に空き家の管理に重過失が無かったとしても、実際に出火したこの家は空き家になってから、雨戸の一部が外され、地元の不良少年が出入りしていた…との証言もありました。

その結果、この人は「空き家の管理が不十分」と近隣から責められることとなった…という相談です。

弁護士の回答としては、「建物の管理において過失が一切無いとは言い切れ無いが、不良少年の侵入やタバコの火の不始末までの予見は不可能」として、重過失と判断される可能性は低く、責任を負う可能性も低い…とのことでした。

 

どの様な立場に追い込まれるでしょうか。…決して良い立場では無いはず。空き家の近隣住民に対して会わせる顔が無くなるはずです。

 

【参考URL】

https://profession-net.com/professionjournal/law-286/

 

 

延焼もあり得る

さて、空き家の火災はその家屋だけで終わるとは限りません。近隣の家に燃え移ることもあり得るのです。しかも空き家は誰も通報する人がいないだけ、火の手が大きくなるリスクも高いのです。

確かに今の壁材などは燃えない素材で構成されてはいますが、それも条件によっては火炎に耐えられないことも考えられ、やはり危険と言わざるを得ません。そして、その火が誰かを巻き込んでしまったら…などと考えると、実に忌まわしいストーリーしか考えられなくなってしまいます。それだけ放置した空家は危険なのです。

 

 

 

火災保険の類焼損害補償特約はどこまで使えるか

それでは、空き家の火災に対して、火災保険はどれくらいの効力を発揮出来るのでしょうか。

火災には類焼損害補償特約という契約があります。この観点から考えてみましょう。

 

 

類焼損害補償特約について

火災保険は基本的には自宅までが適用範囲。隣に燃え移ったとしても、近隣の家の被害は補償の対象にはなりません。しかも、その火災が過失による物であれば法的に守られ、損害賠償の責任からも守られるのです。

とは言え、いくら責任が無いからと言って、被害を与えてしまったのは事実。モラルの観点からすれば責任を問われ得る物です。

そんな場合に役立つのが類焼損害補償特約です。この特約は延焼をしてしまった場合に近隣の住宅まで補償対象とする契約、損害賠償請求の義務は負わなくとも、火災保険で損害に対応が出来るのです。

 

 

空き家は保険適用が出来るのか

それでは、空き家にはこの特約は適用されるのでしょうか。

残念ながら、この特約はほとんどの保険会社では空き家には適用にはなりません。類焼損害補償特約はあくまでも居住している建物に限定されます。

ですから、前述の様な不良少年たちが火を出してしまい、隣に延焼したとしても補償対象にはならないのです。
こちらも参照ください。

 

 

 

失火法と空き家管理

 

ここで火災に関する法律の「失火法」に触れ、空き家管理について考えてみます。

 

 

失火法の概要

 

火災は大きく分けて「故意に起こす物」と「過失で起こす物」の2つに分けることが出来ます。前者が放火などで、後者が失火です。

失火法は失火を取り扱う法律。火災が失火であれば、近隣への損害賠償を免除させるという法律です。

ですから、仮に自宅が火を過失で出してしまった場合などは、この失火法によって守られ、近隣への賠償から救済されるのです

ただし、失火法はどんな過失でも認める訳ではありません。故意とも思える様な重大な過失の場合には適用から外れ、守られなくなるのです。

 

 

放火などの場合

では、どの様な火災が失火法に適用されるのでしょうか。

まずは放火について考えてみましょう。

空き家の放火は第三者が出す火のため、空き家の持ち主は基本的には責任を負いません。しかし、空き家の状況によっては責任を問われる場合もあり得ます。

例えば、空き家の管理が悪く、容易に中に入れる場合。「簡単に第三者が火を出せる状況を作った」との判断となり、重大な過失とされ得ます。その場合には失火法の適用からはずれ、損害賠償責任を負うことになるのです。

当然ながら、損害賠償額は多くの場合が非常に高額。空き家の管理を怠った代償は高く付くのです。

 

 

漏電火災などの場合

では、漏電火災の場合はどうなるのでしょうか。

漏電火災は電線のショートなどによって起こる火災です。ですから、家電製品を使っていない空き家の場合は起こりにくいと考えられます。ただし、それはブレーカーが上がっていればの話であり、家電製品がコンセントに刺さっていなかったとしても、電線が生きていることもあり得るのです。

ところで、家屋の中を走っている電線は樹脂で覆われた物です。電線は絶縁されているので、安心して使うことが可能です。

しかし、電線の被覆はいつまでも使える訳では無く、年月が経つと、やはり劣化してしまいます。そして、場合によってはショートしてしまうこともあり、火を出してしまうことも考えられるのです。

では、空き家の漏電火災はどうなるのでしょうか。

空き家の漏電火災の場合、空き家の電線は所有者が管理する責任を負います。ですから、仮に空き家で漏電火災を起こした場合には管理の点で重大な過失とされ、失火法が適用されない場合もあり得るのです。

しかも、空き家は類焼損害補償特約の対象外となる会社がほとんどです。非常にマズい局面に追い込まれてしまうのです。

 

 

【参考URL】

 

https://gentosha-go.com/articles/-/13682

 

 

まとめ

空き家の火災について取り上げました。過失であれば確かに救いの道はありますが、それから外れると、非常に大きな損失を招くことが分かったと思います。

しかも、保険も空き家には冷たいことも分かったことと思います。

放置空き家は非常に危険です。大きなトラブルを招く前に、何らかの対処をしたい物です。

 

高祖広季

空き家パスの運営会社、株式会社ウィントランスの代表です。 年間1,500件以上の空き家の相談を受けています。佐賀県出身です。