空き家を駐車場にすると損?固定資産税が高くなる理由や計算方法、いくらになるかも解説
「空き家を売却しようか悩んでいる」
「空き家を解体して駐車場にすると固定資産税額が6倍になると聞いたけど、理由を教えてほしい」
住む予定のない空き家を相続した多くの方は、空き家の活用に頭を抱えるものです。
一般的には、空き家を解体して駐車場として活用する方法が有名です。ところが、空き家から駐車場にすると固定資産税額が最大6倍になります。このことを知らずに駐車場経営を始めて、収益を圧迫してしまうことも珍しくありません。
そこで今回は、空き家を駐車場にした場合のメリットやデメリットをお伝えしつつ、
- 空き家を解体して駐車場にした場合に固定資産税が6倍になる理由
- 空き家と駐車場の固定資産税のシミュレーション
- 駐車場経営で収益が出るのか
などについて解説していきます。
目次
空き家を駐車場にするメリット
空き家を解体して駐車場経営を始めるとどのようなメリットがあるのか、見ていきましょう。
メリット1.少額の初期費用で駐車場経営がはじめられる
アパートやマンションなどを経営するよりも少額の初期費用で駐車場経営がはじめられます。
駐車場の他にも空き家を解体して活用する方法はいくつかあり、アパートやマンション、オフィスビル、コインランドリー、トランクルームなどが一般的です。
その中でも駐車場と同じくらい有名な活用方法とされるアパートやマンションは、建物の建設費が高額になります。国税庁『地域別・構造別の工事費用表』に基づき、全国平均の1㎡(約3.3坪)あたりの建築費用を表にまとめました。
【図1】
もちろん建物の構造によって変わりますが、アパートやマンションの建築では1坪あたり約60万円〜90万円程度です。例えば150坪の鉄骨造マンションを建築するなら、約1億2,375万円が建築費用の目安です。さらに、初期費用として火災保険や地震保険などの保険料、各部屋の諸設備費用も必要なので、多額の費用がかかってしまいます。
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一方、駐車場経営の初期費用は、駐車場部分の整備と、その他駐車場に必要な付随設備(フェンス、看板、照明、精算機など)を合わせて200万~500万程度です。
空き家を解体して駐車場をつくる場合は、駐車場部分をアスファルトやコンクリートで舗装整備しますが、建物の建築費はかかりません。アパートやマンション建築よりも、比較的少額で経営をスタートできるため、経済的負担がかからない活用方法と言えます。
メリット2.維持管理費がかからない
駐車場経営は、アパートやマンション経営に比べて維持管理費がかかりません(図2)。
【図2】
駐車場は固定資産税などの税金が発生しますが、それ以外の負担としては、定期的な清掃や巡回、付随設備のメンテナンス程度です。また、雑草駆除が面倒であれば、駐車場経営を始める初期段階でアスファルトやコンクリート舗装整備をすれば雑草は生えてきません。
一方、アパートやマンションを建設して貸し出す場合、入居者の入れ替えに伴う修繕費用、各部屋の設備のメンテナンス費用、火災保険料などさまざまな維持管理費がかかります。家賃収入を得られるというメリットはありますが、駐車場経営に比べて大きな維持管理費の負担が発生します。
メリット3.立地を問わず活用が可能
駐車場経営は、立地を問わずに土地を活用できます。
駅から遠い立地の場合、アパートやマンション、オフィスビルの経営に向いているとは言えません。これらの建物は、通勤や生活の利便性が重視されるため、駅から遠いほど需要は減っていきます。
また、用途地域の制限が厳しいエリアでは土地を活用できない可能性があります。用途地域とは、「都市計画法で定められた、建築できる建物の用途等を定めた地域」のことです。
◯用途地域
都市における住居、商業、工業といった土地利用は、似たようなものが集まっていると、それぞれにあった環境が守られ、効率的な活動を行うことができます。しかし、種類の異なる土地利用が混じっていると、互いの生活環境や業務の利便が悪くなります。
そこで、都市計画では都市を住宅地、商業地、工業地などいくつかの種類に区分し、これを「用途地域」として定めています。引用元: 国土交通省|みんなで進めるまちづくりの話
つまり、用途地域の制限がある場合、アパートやマンションの建ペい率や容積率の制限があり十分な大きさの建物が建てられない、そもそもオフィスビルや店舗が建築できない、といった制限があるため、土地を十分に活用できません。
一方、駐車場の場合は立地に左右されず土地を活用できます。例えば、「1人1台の車がないと生活できない地域や町なら月極駐車場」、「オフィス街や駅に近い商業圏ならコインパーキング」などを設置すれば、毎月安定的な収入が見込めます。
メリット4.簡単に売却や転用できる
空き家を解体して駐車場にした場合でも、「やっぱり売却したい」「別の活用方法に転用したい」と考える方は少なくありません。そう考えたとき、すぐに売却や転用できる点も駐車場経営のメリットです。
アパートやマンションなど建物を建ててしまうと、リフォームや大規模なリノベーションをしなければいけません。
ところが駐車場であれば、土地の上にあるものは付随設備のみなので、すぐに第三者へ手放すことができます。付随設備のみであれば撤去や解体も容易です。
メリット5.狭い土地や変形した土地でも活用できる
駐車場は土地の形状に合わせて駐車場レイアウトを設定できるため、狭い土地や変形した土地でも柔軟に活用できます。
アパートやマンションの経営では、比較的大きく形の整った土地が求められます。一方、駐車場なら、10〜15坪程度の土地があれば2〜3台の普通車を停めるスペースは確保できるので、大きさに左右されず土地を活用可能です。
空き家を駐車場にするデメリット
駐車場経営を検討中の方は、メリットだけではなくデメリットも押さえておきましょう。
デメリット1.固定資産税や都市計画税が増える
空き家を解体して駐車場にすると、土地の固定資産税や都市計画税の軽減措置が受けられなくなります。
詳細は後ほどご説明しますが、軽減措置が適用されなくなると、固定資産税は最大6倍に、都市計画税は最大3倍にまで増える可能性があります。
デメリット2.土地の利用効率が良くない
駐車場は、他に比べて土地の利用効率が良くありません。
コインランドリーやトランクルームは、2階、3階と土地を縦に活用できるため、利用効率で優れています。一方、駐車場は土地を平面に活用するため、利用効率が悪くなるというデメリットがあります。
駐車場は空き家より固定資産税が6倍高い!その仕組みとは?
空き家を駐車場にすると固定資産税が6倍になる仕組みについて見ていきましょう。
家が建てられている「住宅用地」と、駐車場として活用されている土地では、税法上の扱いや計算方法が異なります。
具体的に言えば、駐車場には「住宅用地の特例措置」が適用されず、空き家を保有したときに比べて固定資産税が6倍高くなる、というものです。
「住宅用地」と「住宅用地の特例措置」とは?
「住宅用地」とは、住宅部分などの人が住むため家屋がある土地を意味します。
そして、「住宅用地の特例措置」とは、住宅用地の所有者の税負担を軽減する目的で設けられた税制優遇措置です。
専用住宅や併用住宅など、住居部分のある家屋の敷地になっている土地のことを住宅用地といいます。住宅用地には、税の負担を軽減するため、特例措置が適用されます。
「住宅用地の特例措置」は、住戸1戸あたりの敷地面積によって軽減される税額が異なります(図3)。
【図3】
敷地面積 (一戸あたり) |
固定資産税 | 都市計画税 | ||
---|---|---|---|---|
税率 | ー | 1.4% | 0.3% | |
住宅用地 | 一般住宅用地 | 200㎡を超える部分 | 価格の3分の1 | 価格の3分の2 |
小規模住宅用地 | 200㎡までの部分 | 価格の6分の1 | 価格の3分の1 |
(著者作成)
つまり、空き家であっても、人が住むための家屋がある「住宅用地」として認められるので、「住宅用地の特例措置」が適用され、固定資産税が最大6分の1(都市計画税は最大3分の1)にまで軽減されるのです。
一方、駐車場は「住宅用地」ではないので税制優遇が適用されず、結果として固定資産税が最大6倍に増える、というわけです。
「住宅用地」が適用される面積は住宅の種類で違う
一言で人が住むための家屋と言っても、戸建てやアパート、マンションや自宅兼事務所などさまざまな種類があります。空き家だからと言って、必ずしも「住宅用地の特例措置」の恩恵を100%受けられるわけではありません。
「住宅用地」の敷地面積は、住宅の敷地として使用されている土地の面積に、下表の住宅用地の率を乗じて求めます(図4)。
【図4】
「専用住宅」とは居住のみを目的に建てられた住宅で、戸建て、平家建て、アパートやマンションなどのことです。
「併用住宅」とは店舗や事務所など事業用の用途を併せ持つ住宅で、自宅兼事務所や診療所、倉庫などのことです。
なお、住宅用地の適用となる土地の面積は、専用住宅も併用住宅も住宅の床面積の10倍までです。
「特定空き家」に指定されると空き家でも固定資産税は6倍になるので注意
「駐車場にしなくても、空き家のまま保有しておけばいいんじゃないの?」とお考えの方もいることでしょう。ところが、空き家であっても固定資産税が6倍になる可能性があるので注意が必要です。
それが「特定空き家」です。空き家が増えると、周辺の生活環境の悪化や家屋の崩壊・火災リスクなどが高まります。その防止強化策として平成27年から「空き家等対策の推進に関する特別措置法」が施行され、管理状態が不十分な空き家が「特定空き家」として指定されるようになりました。
この法律において「特定空家等」とは、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等をいう。
また、法改正により特定空き家になる前の段階でも固定資産税が増税される可能性が出てきました。
令和5年12月13日に施行される改正空家対策特措法で設定された「管理不全空き家」です。 「管理不全空き家」に対しても行政による改善の指導や勧告が実施できるようになったばかりでなく、固定資産税の住宅用地の特例の解除も可能となりました。
この法律が定める「特定空き家」や「管理不全空き家」に指定されると、空き家であっても固定資産税が6倍になるので注意しましょう。
空き家の固定資産税をシミュレーション
ここからは、具体的に固定資産税をシミュレーションしていきます。
税金の全体感を掴むためにも、固定資産税とセットで課税される都市計画税も計算していきましょう。
空き家の固定資産税
シミュレーションでは以下の条件で計算していきます。
【条件】
- 所有者はAさん
- 土地の面積は180㎡
- 事業用設備のない専用住宅
- 今年の建物の固定資産税評価額は400万円
- 今年の土地の固定資産税評価額は1,500万円
- 父から相続した、遠方の住む予定がない空き家の土地
所有者Aさんの土地の面積は180㎡なので、「小規模住宅用地」に当てはまります(図3)。また、事務所や診療所などが併設されていない「専用住宅」なので「住宅用地の率は1.0」です(図4)。
そして、固定資産税率は一律1.4%、都市計画税率は一律0.3%であることを加味すると、計算式は次のとおりです。
【計算式】
- 建物の固定資産税=固定資産税評価額×1.4%
=400万円×1.4%
=5.6万円 … ① - 建物の都市計画税=固定資産税評価額×0.3%
=400万円×0.3%
=1.2万円 … ② - 土地の固定資産税=固定資産税評価額×6分の1×1.4%
=1,500万円×6分の1×1.4%
=3.5万円 … ③ - 土地の都市計画税=固定資産税評価額×3分の1×0.3%
=1,500万円×3分の1×0.3%
=1.5万円 … ④
所有者Aさんが納めるべき固定資産税額は118,000円(①+②+③+④)です。
固定資産税は、その年の1月1日時点の土地・物件所有者に課税されます。4〜6月頃に所有者の元に届く納税通知書に基づき、コンビニや郵便局等で納付しなければなりません。これは空き家であっても同じ対応です。
駐車場の固定資産税をシミュレーション
ここからは、「住宅用地の特例措置」が適用されない駐車場の固定資産税についてシミュレーションしていきましょう。
駐車場の固定資産税は「土地」「設備」に分けて計算していきます。
駐車場の土地にかかる固定資産税
以下の条件で計算していきます。
【条件】
- 所有者はBさん
- 土地の面積は180㎡
- 今年の土地の固定資産税評価額は1,500万円
- 父から相続した空き家を解体し、月極駐車場にして経営している
- 付随設備はなし
計算自体はシンプルで、「住宅用地の特例措置」がなくなるだけです。
【計算式】
- 土地の固定資産税=固定資産税評価額×1.4%
=1,500万円×1.4%
=21万円 … ① - 土地の都市計画税=固定資産税評価額×0.3%
=1,500万円×0.3%
=4.5万円 … ②
所有者Bさんが納めるべき固定資産税額は255,000円(①+②)です。
駐車場の設備にかかる固定資産税
次は、駐車場に付随設備があるケースを想定して計算していきましょう。
【条件】
- 所有者はCさん
- 土地の面積は180㎡
- 今年の土地の固定資産税評価額は1,500万円
- 父から相続した空き家を解体し、月極駐車場にして経営している
- 設備の取得費用は135万円(アスファルト敷設:5,000円/㎡、精算機:45万円)
所有者Bさんと異なり、駐車場に付随設備がある点に注意ください。付随設備には、「償却資産税」が課税されます。償却資産とは「土地や家屋以外のもので会社や個人が事業用に持つ資産(構築物、機械、 器具、備品など)」のことです。ただし、償却資産税評価額が150万円を下回れば課税されない免税措置があります。
【計算式】
- 土地の固定資産税=固定資産税評価額×1.4%
=1,500万円×1.4%
=21万円 … ① - 土地の都市計画税=固定資産税評価額×0.3%
=1,500万円×0.3%
=4.5万円 … ② - 設備の固定資産税=償却資産税評価額×1.4%
=0円 … ③(取得費用が150万円未満なので0円)
所有者Bさんが納めるべき固定資産税額は255,000円(①+②+③)です。
空き家を駐車場にする場合の費用は?
空き家を解体して駐車場の経営を始めようと考えている方は、「費用はどれくらいかかるのか」が気になるのではないでしょうか。
空き家を駐車場にする場合、初期費用(解体費用と設置費用)、維持費用の2つがかかります。
設置する駐車場のタイプや土地の面積によりますが、未舗装の土地330㎡(100坪)に10台分の駐車スペースを設ける場合を想定すると、初期費用の合計は200〜650万円程度になります。維持費用は固定資産税額などによって変わります。
- 解体費用 : 100〜150万円
- 設置費用 : 100〜500万円(駐車場のタイプによる)
- 維持費用 : 固定資産税や管理費用による
ここからは、駐車場のタイプごとに設置費用を細かく見ていきましょう。
月極駐車場の費用
駅から遠い立地でも比較的経営しやすい月極駐車場は、未舗装であれば100万円程度の初期費用で経営をスタートできます。
【図5】
駐車場の形式 | 必要な作業 | 初期費用 |
---|---|---|
未舗装 |
|
|
アスファルト |
|
・工事費用:5,000円/㎡~
|
コンクリート |
|
|
(筆者作成)
コインパーキングの費用
駅周辺やオフィス街に設置されることが多いコインパーキングは、月極駐車場に比べて設備が多いため、初期費用は膨らみやすいです。
【図6】
駐車場の形式 | 必要な作業 | 初期費用 |
---|---|---|
|
|
|
【コインパーキングの費用】
|
(筆者作成)
立体駐車場の費用
大きな土地や商業ビルに併設されることが多い立体駐車場は、億単位の初期費用が必要です。1台あたりの駐車スペースで220〜500万円必要です。
【図7】
駐車場の形式 | 収容台数ごとの初期費用 |
---|---|
自走式(自身で駐車) | ※1台あたり平均220〜350万円
|
機械式(機械が駐車) | ※1台あたり平均220〜500万円
|
(筆者作成)
空き家を駐車場にする場合の収益は?初期費用回収までにかかる期間は?
空き家を解体して駐車場にするだけでも、多くの初期費用が必要になることがお分かりいただけたかと思います。
それでは、駐車場の収益性はどの程度なのか、シミュレーションしてみましょう。
駐車場で初期費用回収までにかかる期間をシミュレーション
今回は、比較的少額で始められるという駐車場経営のメリットを活かすため、以下の条件でシミュレーションします。
【条件】
- 所有者はDさん
- 土地の面積は200㎡
- 付随設備がない、並列駐車場
- 1台あたり駐車料金は7,000円/月
- 管理会社委託料は賃料の7%(5〜10%が相場)
- 道路に面する駐車場で合計13台駐車可能(図8)
- 空き家の解体費用および駐車場の設置費用は合計200万円
【図8】
(筆者作成)
道路に面した長方形の駐車場なので、面積のうち活用できる広さは200㎡で、最大13台の駐車が可能です。
- 駐車場の収入=13台×7,000円=91,000円/月 … ①
- 管理委託費用=7,000円×7%×13台=6,370円/月 … ②
- 駐車場の収益=91,000円ー6,370円=84,630円/月 … ①ー②
この駐車場では1か月あたりの収益が84,630円でした。空き家を解体して駐車場を設置したときの初期費用である200万円を回収するまでにかかる期間は24か月後(2年後)となります。
駐車場経営は、アパートやマンション経営に比べて大きな収益は見込めないかもしれませんが、安定収入が得られることと初期費用が比較的少額で済むため、初期費用回収までにかかる期間が短いという特徴を持っています。
まとめ
今回は、空き家を駐車場にすると固定資産税が6倍になる仕組みや駐車場経営のメリット・デメリットを中心に解説してきました。
駐車場には「住宅用地の特例措置」が適用されないため、空き家が残ったままの土地に比べて固定資産税が高くなります。また、駐車場はアパートやマンション経営に比べて、ローリスクかつローコストでできる投資ですが、ハイリターンは見込めません。
しかし、立地を問わず土地を活用できますし、いざというときに売却や転用も簡単にできるため、使わない空き家だからと放置せずにご自身の資産として積極的な土地活用を検討してみてはいかがでしょうか。
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