長崎の空き家補助金を解説ー解体・リフォームなどで活用!申請の流れや注意点も

長崎県と佐賀県を結ぶ西九州新幹線が2022年に開通したことで長崎県は東西に移動しやすいエリアとなり、さらに隣接する福岡県の再開発事業によって多くの投資家から注目されるようになりました。
これにより長崎県は九州地方でも不動産取引が多い地域となりましたが、買い手が見つからない空き家はそのまま放置されることが多く、自治体の大きな問題となっています。
空き家の増加は街の景観を損ねたり治安悪化の原因になるため所有者に管理を指示する自治体も増えてきましたが、抜本的な解決になっていないのが現状です。
その一方で、空き家を管理しようとしても遠方だったり費用面で対応できないと悩んでいる所有者も多いです。
そこで長崎県の自治体は空き家の改修や解体などについて補助金制度を公開しており、所有者の費用負担を軽減することを目指しています。
この記事では長崎県の自治体が令和7年度時点で公開している補助金制度を紹介します。
補助金以外の空き家対策やよくある質問とトラブル例についても解説しますので、参考にしてください。
- 長崎県の空き家問題
- 長崎県で使える空き家関連補助金制度
- 補助金を受けるための流れと注意点
- 補助金以外の空き家対策
- よくある質問とトラブル例
相続などで取得した空き家に住む予定がない場合は、売却も選択肢のひとつです。
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他社で断られた物件でも、独自のノウハウで対応できるケースが多くあります。査定・相談はすべて無料ですので、お気軽にお問い合わせください。
長崎県の空き家問題、現状は?
総務省から公開されている「令和5年住宅・土地統計調査の結果(住宅及び世帯に関する基本集計)」によると、長崎県の総住宅数は令和5年度時点で約65万戸となり、5年前の調査よりも約1万戸減少していることが分かりました。
ただし空き家の割合は増加しており、全体の約10%が空き家という結果になりました。
管理されていない空き家が増加すると寂れた雰囲気の街になってしまい、火災などのトラブルを発生させることもあります。
また、所有者不明の空き家は放置されやすく、再開発事業や土地区画整理事業といった計画を進める弊害になってしまいます。
安心安全に暮らすことができる街でなければ人口が流出してしまい、さらに空き家が増えるという悪循環になってしまうことから、空き家の増加を食い止めることが自治体の急務といえます。
【引用サイト:令和5年住宅・土地統計調査】
空き家問題解決策のひとつ「補助金制度」
長期間放置された空き家は自治体だけでなく、空き家の所有者にとっても大きなリスクとなります。
たとえば家屋が倒壊する可能性が高い状態になると洪水や台風などで建材が飛散し、近隣住民に被害が及ぶと損害賠償を請求されることもあります。
また、自治体からの是正指示に従わなければ家屋の強制解体や固定資産税の優遇制度撤廃といった措置を講じられることもあります。
このようなリスクを避けるためにも空き家は適切に管理するか家屋を解体するのがおすすめですが、費用面から対応できない所有者も少なくありません。
そこで長崎県の自治体は補助金制度を公開しており、利用することで空き家の改修や解体、家財処理などについて所有者の費用負担を軽減することができます。
そのため、空き家の管理や処分を検討している人は各自治体の制度をチェックし、自治体に相談することが大切です。
長崎県で使える空き家関連補助金
この章では令和7年度時点で募集されている補助金制度について、「リフォーム・改修」「解体」「取得」「家財処理」という項目に分けて紹介します。
これから空き家の利活用もしくは解体を検討している人は、チェックしてください。
空き家のリフォーム・改修に関する補助金
空き家のリフォーム・改修に関する補助金は次の通りです。
| 自治体名 | 制度名 | 補助金の上限額 |
|---|---|---|
| 長崎市 |
定住促進空き家活用補助金 特定目的活用支援空き家リフォーム補助金 |
補助対象経費の50%かつ50万円。 対象経費の50%かつ150万円(耐震改修費用は70万円上乗せ)。 |
| 諫早市 |
空き家バンクの活用補助金 |
250万円。 |
| 島原市 |
移住促進空き家改修費補助金 |
補助対象事業に要した費用の50%かつ30万円。 |
| 南島原市 |
移住促進空き家活用事業補助金 |
100万円(家財撤去費用10万円を含む)。 |
| 西海市 |
空き家改修補助金 |
補助対象経費の80%かつ30万円。 市外在住かつ50歳未満:加算50万円。 市内在住かつ50歳未満:加算20万円。 18歳未満の子(胎児含む)1人につき:加算20万円。 |
| 五島市 |
空き家改修・家財処分補助金 |
UIターン者:補助対象経費の50%かつ50万円。 新婚家庭または空き家所有者:補助対象経費の50%かつ100万円。 |
| 松浦市 |
空き家バンク利活用推進事業補助金 |
補助対象事業の50%かつ50万円。 |
空き家の解体に関する補助金
空き家の解体に関する補助金は次の通りです。
| 自治体名 | 制度名 | 補助金の上限額 |
|---|---|---|
| 長崎市 |
特定空家等除却費補助金 |
補助対象経費の50%かつ50万円。 |
| 南島原市 |
老朽危険空家除却支援事業 |
補助対象経費の50%かつ80万円。 |
| 長与町 |
老朽危険空家等除却支援事業 |
50万円。 |
| 西海市 |
老朽危険空き家除却支援事 |
除却工事費の50%かつ50万円。 |
| 松浦市 |
空き家バンク利活用推進事業補助金 |
補助対象事業の50%かつ50万円。 |
空き家の取得に関する補助金
空き家の取得に関する補助金は次の通りです。
| 自治体名 | 制度名 | 補助金の上限額 |
|---|---|---|
| 雲仙市 |
空き家活用促進奨励補助金 |
仲介手数料が対象で、上限は10万円。 |
空き家の家財処理に関する補助金
空き家の家財処理に関する補助金は次の通りです。
| 自治体名 | 制度名 | 補助金の上限額 |
|---|---|---|
| 長崎市 |
空き家家財処分費補助金 |
補助対象経費の50%かつ10万円。 |
| 島原市 |
移住促進空き家改修費補助金 |
補助対象事業に要した経費の50%かつ10万円。 |
| 南島原市 |
移住促進空き家活用事業補助金 |
10万円。 |
| 雲仙市 |
空き家活用促進奨励補助金 |
10万円。 |
| 五島市 |
空き家改修・家財処分補助金 |
20万円。 |
| 松浦市 |
空き家バンク利活用推進事業補助金 |
補助対象事業の50%かつ50万円。 |
補助金を受けるための流れと注意点
空き家の管理や解体には費用がかかるため、補助金制度の利用は所有者にとって大きなメリットがあるといえます。
しかし自治体が公開している制度はそれぞれ適用要件や必要書類が異なり、正しく理解して準備をしなければ補助金の交付を受けることができません。
そのため、補助金を利用するためにはまず自治体のHPで適用要件と必要書類を確認し、間違いなく利用できる状態にしておくことが重要です。
この章では補助金を受けるための代表的な流れと注意点について、解説します。
申請に必要な主な書類
補助金を申請するためには各自治体が指定する必要書類を全て用意する必要があります。
主に指定される書類は次のようになりますので、事前に準備しておくことをおすすめします。
- 指定様式の補助金交付申請書
- 建物の全部事項証明書
- 運転免許証
- 住民票
- 印鑑証明書
なお、上記以外にも不動産取得の補助金であれば売買契約書、リフォームの場合は建物の平面図や立面図が必要になるケースがあります。
必要書類によってはすぐに準備できないこともありますので、不明点があれば自治体に相談することがポイントです。
特に印鑑証明書は印鑑登録が必要となり必ず一度は市役所へ出向くことになりますので、注意が必要です。
なお、制度によっては工事完了後に実績報告書の提出を求められることもあります。
申請する上での注意点や落とし穴
補助金を受けられない失敗事例で多いのが、必要書類の準備漏れです。
特にリフォームや解体関連の制度は「施工前の画像」が必須となるケースが多く、着工前に撮影していなければ二度と準備できないことになるため注意が必要です。
そのため補助金制度を利用するのであれば必ず工事業者に連絡して撮影を依頼するか、自分で念入りに撮影して自治体に相談し、問題ないことを確認してもらうことがポイントだといえます。
補助金以外で空き家問題を解決する方法
自治体が公開している補助金制度だけでは空き家問題を解決できるわけではなく、むしろ利用することで所有者にとってマイナスになることもあります。
そのため補助金制度を利用しない空き家問題の解決方法についても、知っておく必要があります。
この章で詳しく解説しますので、参考にしてください。
補助金だけでは難しいケースがある
補助金制度のほとんどはあくまでも費用の一部を補助する制度のため、自己負担がゼロになるわけではありません。
そのため空き家を活用する予定がない人にとって補助金制度はあまりメリットがないといえ、申請を見送る人も多いです。
また、制度を利用しようとしても用意する書類の取得が難しかったり手続きが複雑で諦めてしまうといったケースもあります。
申請方法や必要書類の準備については自治体で相談することができますので、制度を利用すべきかも含めてなるべく早く相談することが大切です。
空き家を売却する
自治体が公開している制度は所有者の費用負担を軽減してくれますが、ほとんどの制度は負担割合や上限が設定されており、自己負担がゼロになるケースは少ないです。
つまり、補助金を利用しても空き家を活用する予定がないのであれば自己負担した分だけマイナスすることになり、制度のメリットを活かしきれないといえます。
せっかく改修工事や解体をしても放置したのであれば資産価値は低下し、草が生い茂ってしまいますので結局手間がかかってしまいます。
そこで、管理する予定が将来にわたってないのであれば空き家を売却し所有権を手放してしまうのがおすすめです。
空き家を処分してしまえば管理の手間や費用負担がなくなり、毎年支払わなければならない固定資産税などからも解放されます。
自然災害が発生するたびに空き家の様子を気にする必要もなくなりますので、おすすめの解決策といえます。
なお、空き家を売却するのであれば仲介よりも買取がおすすめです。
なぜなら買取は仲介のように買い手を募集する必要がなく不動産会社が買主となるため、スピーディーに取引できるからです。
さらに仲介と違って解体や測量、不用品の撤去費用を負担する必要がなく、契約不適合責任が免責となるケースが多く、仲介手数料も不要です。
このように、売主にとって手間と工数がかからないという点が買取のメリットといえます。
ただし、買取価格は仲介の相場よりも低くなりやすく買取業者によっては買取価格と買取条件が変わりますので、なるべく多くの業者に査定を依頼することがポイントです。
空き家バンクを活用する
空き家バンクは各自治体が情報を把握し、提供している空き家等のポータルサイトです。
インターネットで物件情報を検索することができ、空き家を売りたい人や貸したい人は空き家バンクに登録して買い手や借り手を募集することになります。
一般的に不動産ポータルサイトと違って空き家に特化しており、費用もかかりません。
また、長崎県の場合、制度によって空き家バンクに登録されている空き家を活用することで補助金額が増えることもありますので、補助金と併用したい場合でも空き家バンクは利用すべきといえます。
なお、空き家バンクは市税を滞納していないなど利用するための要件があります。
さらに撮影した画像や物件コメントに虚偽があると物件情報自体が削除されてしまうこともありますので、正しい情報を入力することが重要です。
空き家を活用する
空き家をリフォームして民泊として活用したり賃貸に出す方法は、空き家の代表的な活用方法です。
また立地が良く敷地が広ければ建物を解体して駐車場用地やコインランドリー、コンビニ用地として運用するという方法もおすすめです。
どちらの方法も安定した収入を得られる可能性がありますので、最適な活用方法について不動産会社に相談する所有者も多いです。
ただし賃貸や事業用地として活用すると一部の節税制度が受けられなくなるなどデメリットもありますので、将来売却する予定や相続する予定がある人は注意が必要です。
相続や贈与、自己利用する可能性があれば所有権を維持できる「活用」を選択し、可能性がなければ「売却」を選択することがおすすめです。
よくある質問とトラブル例
この章では空き家関連の補助金制度についてよくある質問とトラブル例を紹介します。
Q:補助金と売却、どちらが良いですか?
補助金を利用して空き家を利活用するか売却するのかを選ぶコツは、空き家を所有し続けるかどうかを決めることです。
将来自己利用したり相続や贈与の予定がある場合は所有権を維持する必要があるため、補助金を利用して費用負担を減らしたうえで管理するのがおすすめです。
一方、補助金を利用して空き家を適切な状態に修繕したり解体したとしても、活用しないのであれば自己負担分だけマイナスになってしまいますので、売却する方が向いています。
一度売却してしまうと買い戻すことは難しくなりますので、空き家の取扱いを将来にわたって慎重に検討し、判断することで正しく選択できるようになります。
ただし、制度によっては補助金を活用しつつ売却できるケースもありますので、どちらを選ぶにしてもなるべく早く自治体に相談することも大切です。
Q:古い空き家や傷みがある空き家でも補助金は使えますか?
空き家がどのような状態であっても原則補助金制度は利用できますが、例外はあります。
たとえば家屋の大部分が破損している場合や工事ができない立地の場合は申請を却下されることがあり、注意が必要です。
これ以外にも築年月日が申請に影響することもあります。
Q:補助金申請が難しそう…誰かに頼めますか?
リフォーム業者や解体業者が代理人となり、申請することが可能です。
ただし補助金制度の必要書類には空き家の所有者にしか準備できない書類もありますので、事前に確認しておくことがポイントです。
Q:空き家を自治体に寄付できますか?
2025年時点で空き家の寄付を受け付けている自治体はありませんが、解体して更地にすることで一定の要件を満たせば、土地を国庫に帰属させられる制度はあります。
「相続土地国庫帰属制度」と呼ばれるこの制度は令和5年4月27日から開始されており、所有者不明の土地を発生させないことを目的としています。
土地の状況や要件によっては国庫帰属が認められる場合もありますので、自治体を通じて相談するのもおすすめです。
【参考サイト:法務省:相続土地国庫帰属制度について】
Q:住宅セーフティネット制度とは何ですか?
令和7年10月1日に改正住宅セーフティネット法が施行されました。
誰もが安心して賃貸住宅に居住できる社会の実現を目指して、住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律となっており、全ての人が安全に暮らせる社会を実現することが目的となっています。
法律の施行を受けて空き家を賃貸住宅として活用する自治体も増えており、新しい空き家対策として注目されています。
【参考サイト:住宅セーフティネット制度 ~誰もが安心して暮らせる社会を目指して~ – 国土交通省】
まとめ
長崎県の自治体は空き家の増加に歯止めをかけるため、空き家の所有者が利用しやすいよう多くの補助金制度を公開しています。
ただし補助金の交付を受けるためには正しい手順を踏み、必要書類を全て揃えなければなりません。
施工前でしか用意できない準備物を用意し忘れたり、申請に時間がかかっている間に補助金制度が終了してしまうという失敗事例もありますので、なるべく早く正確に準備を進めることがポイントです。
そのためにも事前に自治体へ制度の内容について問い合わせしておき、スムーズに手続きできるように情報収集しておくことをおすすめします。










