「告知事項あり」物件とは?不動産の告知義務や種類、賃貸や売買での注意点を解説
不動産の広告に、「告知事項あり」と明記されている場合があります。告知事項あり物件とは、その物件について告知すべき事項がある物件のことです。宅地建物取引業法第35条により、借主・買主の判断に大きく影響を与えるため書面などに記載しなければいけないと決められています。
不動産の購入や賃貸を検討している方は、どのような意味かよく分からなくてもあまりいいイメージを持たない方が多いかもしれません。
不動産の売主・貸主にとって、告知事項となる事項の種類や告知義務がある期間をしっかりと把握できておらず、不安に感じている方もいるでしょう。
告知事項は、その種類・内容によっては借主・買主にとって気にならない、むしろメリットになる場合もあります。
この記事では告知事項ありとは何か、種類や告知期間、告知事項あり物件のメリット・デメリットを解説します。
- 「告知事項あり」とは契約の前に告知すべき事項がある物件のこと
- 告知事項の種類は「心理的瑕疵」「環境的瑕疵」「物理的瑕疵」「法的瑕疵」の4つに分類される
- 「告知事項あり」物件の告知期間は3年間である
- 「告知事項あり」物件にはメリット、デメリットどちらもある
目次
「告知事項あり」とは
告知事項とは、不動産の売買や賃貸契約をする前に、買主や借主に告知すべき事項がある物件をいいます。購入や賃貸を検討している買主や借主の意思に影響を与える事実があるということです。
「告知事項あり」とは、その物件に欠陥があることを指し、通常あるべき品質や性能を欠いている「瑕疵」のある物件です。一般的に「告知事項あり」は、「訳(ワケ)あり」「事故物件」「心理的瑕疵」と表現されている場合もあります。
「告知事項あり」の瑕疵の多くは、人の死にかかわる事故や事件などの心理的瑕疵がイメージされやすいですが、それ以外にも告知事項にあたるものがあり、種類は主に4つに分類されます。
- ・心理的瑕疵
- ・環境的瑕疵
- ・物理的瑕疵
- ・法的瑕疵
ひとつずつ見ていきましょう。
心理的瑕疵
心理的瑕疵とは、具体的には、自殺や殺人、一定期間放置された孤独死、火災、人の死にかかわる忌まわしい事件や事故などが当てはまります。ただし、何が心理的瑕疵に当たるかは、あくまでも買主・借主の心理的な感覚によるため、明確な基準はありません。一般的に、多くの人が心理的に嫌悪感を覚えるような事象は、心理的瑕疵に該当すると考えてよいでしょう。
なお、実家で両親が亡くなった場合でもそれがいわゆる自然死(老衰、持病による病死など)や日常生活の中で生じた不慮の事故(自宅の階段からの転落や、入浴中の溺死や転倒事故、食事中の誤嚥など)の場合は原則として告げなくても良いことになっています。
これは、そのような死が居住用不動産について発生することは当然に予想されるもので、一般的であると考えられているためです。
ただし、両親が孤独死した場合など長期間にわたって人知れず放置されたこと等に伴い、いわゆる特殊清掃や大規模リフォーム等が行われた場合においては、告知義務があるとされています。
環境的瑕疵
環境的瑕疵とは、生活が害されたり、居住者が不快に感じる施設等が周辺の環境に存在する場合が当てはまります。たとえば、その物件の近隣に墓地や火葬場、遊戯施設、指定暴力団事務所があったりする場合です。しかし、中にはそういった施設が周辺にあったとしても、それを不快に感じない人もいるため、環境的瑕疵も判断が難しい場合があります。
物理的瑕疵
物理的瑕疵とは、その建物や土地そのものにある欠陥や不具合がある物件が当てはまります。たとえば、雨漏りによる壁のひび割れや木材の一部が腐食、シロアリ被害によって起こった建物の傾き、過去に起きた火災により建物を改修したケースなどが該当します。物理的瑕疵は、基本的には修繕工事で解消されるものが多いでしょう。
法的瑕疵
法的瑕疵とは、法令等によって自由な使用収益が制限される場合が当てはまります。具体的には、建築基準法や都市計画法、消防法などの法令に違反している物件を指し、接道義務を満たしていない、建ぺい率・容積率をオーバーしている、防災設備や消防設備が法令に適合しない場合などです。
特に、建築基準法や都市計画法に違反している物件は、「既存不適格物件」や「再建築不可物件」と呼ばれます。基本的には、既存不適格物件や再建築不可物件は、再建築の際には現行の法律に適合した物件にして建築しなければなりません。
関連記事:再建築不可物件を買取会社に売却する方法!買取を断られる3つの理由から業者の選び方も解説
「告知事項あり」物件の告知義務について
不動産取引においては、重大な欠陥や欠損のある瑕疵物件については、売主・貸主は、買主・借主に対し、その瑕疵について告知する義務があり、これを「告知義務」といいます。
「告知事項あり」物件はなぜ告知義務があるの?
告知事項について説明するのは、借主・買主が物件の契約の意思決定をするうえで重要な判断材料となる事項だからとされています。
宅地建物取引業法第35条では、物件の契約の意思決定をするうえで重要な判断材料については、契約が成立する前までに、不動産の買主や借主などに対して書面などで説明しなければならないと定めています。
売主・貸主が告知義務を怠った場合は、買主・借主は売主・貸主に対して、瑕疵担保責任に基づく損害賠償の請求や、取引の無効や解除を主張できる場合があります。
例えば、売主が宅建業者の場合や、不動産の売買や賃貸契約を締結する場合は売主・貸主が責任を問われることがあります。そのほか、買主・借主の間に宅建業者が入る場合は、不動産業者が告知義務を怠ると、「不告知」または「告知義務違反」として宅地建物取引業法に違反し、説明を怠った不動産業者は責任を問われる場合があるため注意が必要です。
また、宅地建物取引業法第35条では、物件の契約の意思決定をするうえで重要な判断材料については、契約が成立する前までに、不動産の買主や借主などに対して書面などで説明しなければならないと定めています。
いつまで告知しなければならないの?
告知事項の期間については、明確な規定はされていませんが、令和3年10月に国土交通省より「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」が策定されました。具体的には、以下のような内容が記載されています。
・取引の対象不動産で発生した自然死、日常生活の中での不慮の死(転倒事故、誤嚥など)については、原則として告げなくてもよい。
・賃貸借取引の対象不動産、日常生活において通常使用する必要がある集合住宅の共用部分で発生した自然死・日常生活の中での不慮の死以外の死が発生し、事案発生から概ね3年が経過した後は、原則として告げなくてもよい。
・人の死の発生から経過した期間や死因に関わらず、買主・借主から事案の有無について問われた場合や、社会的影響の大きさから買主・借主において把握しておくべき特段の事情があると認識した場合等は告げる必要がある。
(引用元:「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を策定しました|国土交通省)
ただし、売買取引においては、いつまで告知義務があるのか明確な期間は提示されていないため、その事件性や周知性、社会への影響の高さによっては長期に渡っても告知義務があるといえます。
告知事項あり物件のメリットとデメリット
告示事項ありの物件、「瑕疵のある物件」のため、一見デメリットの方が多い気もしますが、メリットもあります。
ここでは、借主・買主から見た告示事項物件のメリットとデメリットを解説します。
告知事項あり物件のメリット
告知事項あり物件のメリットは、以下のとおりです。
・安い家賃で住める
・部屋がきれい
・フリーレント期間が長い
告知事項あり物件は、心理的瑕疵や法的瑕疵によって、通常の物件よりも需要が低くなり、家賃が安く設定されていることが多いです。また、心理的瑕疵がある物件は念入りに清掃やリフォームが行われているため、築年数が古くても部屋がきれいな状態である賃貸に出されている傾向が高かったり、通常の物件よりも入居者が集まりにくい傾向があるため、フリーレント期間が長く設定されているケースもあります。
なかには告知事項があることをさほど気にしない人も一定数いるようですので、瑕疵があっても賃貸で住みたい・購入したいというニーズはあるでしょう。
告知事項あり物件のデメリット
告知事項あり物件のデメリットは、以下のとおりです。
・心理的瑕疵による不安を感じる場合がある
・物件の価値が下がる
・売却や賃貸が難しくなる
自殺や殺人などの事件が起きた心理的瑕疵の告知事項あり物件は、事件や事故を思い出して不安を感じてしまう場合があったり、建築基準法や都市計画法などの法令に違反している法的瑕疵がある場合は、建物の使用が制限されたり、物件の価値が下がるが価値が下がる傾向があるため、将来、売却や賃貸を考える場合は、売れにくかったり賃貸が難しくなる傾向があります。
そのため告知事項あり物件は賃貸で活用したり、売却したりすることが難しく、対処に悩む貸主・売主は多いでしょう。
悩んでいる場合は、訳あり物件の買取を得意としている不動産会社に相談することをおすすめします。
「告知事項あり」についてよくある質問
最後に、告知事項あり物件についてよくある質問をご紹介しておきます。
告知事項はいつまで必要?
賃貸物件の取引の場合、発生した自然死・日常生活の中での不慮の死以外の死が発生し、事案発生から概ね3年が経過した後は、原則として告げなくてもよいとするガイドラインが策定されています。ただし、売買取引においては、現時点では明確な記載はされていません。
親が実家で孤独死した場合は、事故物件になる?
事件性がなく亡くなった物件は、原則として事故物件にはなりません。ただし、長期間にわたって人知れず放置されたこと等に伴い、いわゆる特殊清掃や大規模リフォーム等が行われた場合は告知が必要とされています。
事故物件かどうか調べる方法はある?
事故物件かどうかを調べる方法は、以下のとおりです。
・不動産会社に問い合わせる
・事故物件情報サイトを利用する
不動産業者は、宅地建物取引業法に基づき事故物件を告知する義務があるため、不動産会社に問い合わせるのが、最も確実な方法です。そのほかに、過去に事故や事件があった物件の位置などをまとめた事故物件情報サイトがあるため、購入や賃貸を検討する物件がある場合は、検索してみてもよいでしょう。
まとめ
告知事項あり物件は、心理的瑕疵や物理的瑕疵のある物件をいうため、相場の価格より安く販売されていたり家賃設定されているため、瑕疵について気にならない方にとってはとても魅力的な物件だといえます。
ただし、一般的には「告知事項あり」と記載されている物件は売却が難しい場合が多いでしょう。
なかなか売れない、すぐに売却したい場合には、一般の購入者へ販売する仲介ではなく不動産会社へ売却する買取も検討することをおすすめします。
空き家パスは全国の空き家を中心に「心的瑕疵」のある訳あり物件、「法的瑕疵」のある再建築不可物件の買取を得意としている不動産買取業者です。
売れない「告知事項あり」物件でお困りの際は、お気軽にご相談ください。