土地名義変更費用は?親から子へ生前贈与・相続の場合で所有権移転登記を解説
親から子へ土地の名義を変更した場合、名義変更の原因が相続なのか贈与なのかで必要書類や申請の流れが変わります。
また、土地の名義変更によって贈与税や相続税が発生するため、あらかじめどのくらい課税されるのか知っておくことも大切です。
場合によっては税金が払えず、取得した土地を手放さなければならないこともありますので、節税できる方法も知っておくべきポイントです。
親名義のまま子供が土地を利用することも可能ですが、トラブルになるリスクを抱えてしまいます。
この記事では親子間で土地の名義変更を行う際の方法や手続き、ポイントについて、解説します。
代表的な節税方法も紹介しますので、これから土地の名義変更を予定している人は参考にしてください。
- 親から子へ土地名義変更が必要になるケース
- 土地名義変更の流れと必要な書類
- 土地名義変更に必要な費用と節税方法
- 土地名義変更をしないリスク
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親から子へ土地名義変更が必要なのはどんな時?
親の土地を子が所有するためには所有権の移転登記を行う必要があり、登記によって土地の名義は変更されます。
土地名義変更は「相続」か「生前贈与」のケースで必要となりますので、この章で詳しく解説します。
親が亡くなって相続したとき
親が死亡すると相続が発生し、相続財産の遺産分割協議を行いますが、その結果親が所有している土地を子が取得するとなった場合に土地の名義変更は必要となります。
こうした相続による土地名義変更は遺産分割協議書だけでなく遺言書の内容も大きく影響しますので、親が亡くなった時は公正役場に遺言書が保管されていないか確認することがポイントです。
なお、家が建っている土地を相続する場合は土地だけなのか家ごと相続するのかで遺産分割の内容や相続税が変わりますので、取得する土地の状況は正しく把握することが重要です。
親が生きている内に生前贈与するとき
親が生きている間に土地名義変更をする場合は生前贈与となり、親が贈与者、子は受贈者として贈与契約書を親子間で締結することになります。
相続税対策や子の家づくりを助けるといったケースで生前贈与は利用しやすいですが、生前贈与は将来発生する相続に影響を与えてしまうため、注意が必要です。
相続時のトラブルを避けるためにも贈与財産の内容については当事者間だけでなく将来の相続人全員が納得する内容で進めることをおすすめします。
生前贈与の内容によっては司法書士や税理士などの専門家に相談しながら契約書を作成することもポイントです。
土地名義変更の流れと必要な書類は?
土地名義変更の流れと必要書類は相続と生前贈与によって異なるため、スムーズに変更するためにも事前に知っておくべきポイントです。
この章では土地名義変更をするための流れと必要書類について、相続と生前贈与に分けて解説します。
土地名義変更の原因 | 流れ | 必要書類 |
---|---|---|
相続 | 遺産分割協議 ↓ 必要書類の準備 ↓ 法務局への申請 |
|
生前贈与 | 贈与内容の協議 ↓ 必要書類の準備 ↓ 法務局への申請 |
|
親が亡くなって相続する場合
親が亡くなった場合は相続登記によって土地を名義変更することになり、必要書類と流れは次のようになります。
必要書類
相続による土地名義変更では次の書類が必要です。
- 遺産分割協議書
- 被相続人の戸籍謄本
- 被相続人の除籍謄本
- 相続人の住民票
- 相続人の印鑑証明書
戸籍謄本と除籍謄本は被相続人の本籍がある市役所や役場で取得でき、生前住んでいた住所と本籍が異なるケースもありますので、注意が必要です。
住民票や印鑑証明書は市役所か役場で取得できますが、マイナンバーカードがあればコンビニでも取得可能です。
名義変更の流れ
相続による土地名義変更はまず遺産分割協議書を作成し、その間に被相続人の戸籍謄本と除籍謄本、相続人全員の住民票と印鑑証明書を取得します。
遺産分割協議書は法定相続人の話し合いによって作成され、法定相続人が多いほど時間がかかってしまいます。
相続税は相続開始を知った日から10ヶ月以内に申告しなければならないため、なるべく早く協議をスタートすることがポイントです。
全ての書類が揃えば法務局に登記申請書と共に提出し、申請完了となります。
生前贈与の場合の名義変更の流れ
生前贈与による土地名義変更では次のような必要書類と流れになります。
必要書類
生前贈与による土地名義変更では次の書類が必要です。
- 贈与契約書
- 土地の全部事項証明書
- 土地の固定資産税評価証明書
- 土地の権利証もしくは登記識別情報通知
全部事項証明書は法務局、固定資産税評価証明書は市役所もしくは役場で取得できます。
土地の権利証や登記識別情報通知は再発行ができないため、紛失していることが発覚した場合は事前通知制度や公証人認証制度の利用、資格者代理人の本人確認情報提供が必要になります。
どの方法も追加費用がかかりますので、紛失しないよう大切に保管しておくことが重要です。
なお、土地の贈与契約書は土地の課税額にかかわらず200円の印紙を貼付する必要があります。
貼付せずに締結した場合は印紙税法20条で定められている過怠税が発生してしまいますので、注意が必要です。
名義変更の流れ
生前贈与は親子間で贈与契約書を締結することになりますが、生前贈与によって将来発生する相続の遺産が減ってしまいます。
そのため贈与を受ける子以外の法定相続人にも内容を説明し、理解を得ることが大切です。
贈与契約書が締結されれば全ての必要書類と登記申請書を法務局に提出し、申請完了となります。
相続と生前贈与のどちらも1〜2週間で名義変更は完了しますので、完了予定の時期に全部事項証明書を取得してチェックすることをおすすめします。
土地名義変更にかかる費用は?
土地名義変更は親から子へ所有権を移転することになるため、所有権移転に関連する税金が発生します。
生前贈与と相続ではかかる税金が異なりますので、この章で解説します。
税金の種類 | 生前贈与 | 相続 | 課税額3,000万円の土地を取得した場合 |
---|---|---|---|
登録免許税 | かかる | かかる | 生前贈与:60万円 相続:12万円 |
贈与税 | かかる | かからない | 1,085万円 |
不動産取得税 | かかる | かからない | 45万円 (住宅用地を令和9年3月31日までに取得した場合) |
相増税 | かからない | かかる | 400万円 |
登録免許税(生前贈与・相続の両方でかかる)
登録免許税は土地の名義変更を登記する際に発生し、固定資産税評価額に対して生前贈与は2%、相続は0.4%を掛け合わせることで計算できます。
たとえば3,000万円の土地を名義変更する場合、生前贈与の登録免許税は60万円で相続は12万円です。
ただし司法書士に登記を依頼する場合はこれ以外にも報酬が発生するため、注意が必要です。
【参考サイト:No.7190 登録免許税のあらまし|国税庁】
贈与税(生前贈与のみかかる)
贈与税は土地の固定資産税評価額から基礎控除の110万円を差し引いた額が課税額となり、次の速算表を使って計算することができます。
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | 無し |
400万円以下 | 15% | 10万円 |
600万円以下 | 20% | 30万円 |
1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
4,500万円を超える | 55% | 640万円 |
たとえば土地の課税額が3,000万円の場合、1,085万円が贈与税となり受贈者が納税することになります。
【参考サイト:No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁】
不動産取得税(生前贈与のみかかる)
不動産取得税は不動産を取得した際に発生する税金のことで、土地の課税額に対して4%が税額となります。
ただし令和9年3月31日までに取得した場合は課税額が3%となり、さらに取得する土地が住宅用地・商業用地の場合は課税額を半分にすることができます。
たとえば課税額3,000万円の住宅用地を取得した場合、税額は45万円です。
【参考サイト:総務省|地方税制度|不動産取得税】
相続税(相続のみかかる)
相続税は課税額に対して基礎控除を行い、残った課税額に対して税率を掛け合わせて税額を計算します。
基礎控除は3,000万円+法定相続人の数×600万円で計算することができ、たとえば配偶者と子供3人の場合は5,400万円が基礎控除です。
基礎控除後は次の速算表に課税額を照らし合わせ、計算します。
法定相続分に応じた取得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | – |
1,000万円超から3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
3,000万円超から5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
5,000万円超から1億円以下 | 30% | 700万円 |
1億円超から2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
2億円超から3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
3億円超から6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
たとえば課税額3,000万円の土地を相続した場合、400万円が相続税です。
【参考サイト:No.4155 相続税の税率|国税庁】
親から子への贈与でかかる贈与税を節約する方法は?
直系尊属である親から贈与を受けた場合は通常よりも贈与税は安くなるものの、土地の課税額が高くなると贈与税が払えないケースも少なくありません。
そのため贈与を受ける前に利用できる節税方法を調べ、贈与税を抑えることがポイントです。
この章では代表的な贈与税の節税方法として「相続時精算課税制度」と「暦年課税制度」を紹介します。
どちらもメリットだけでなくデメリットもありますので、チェックしてください。
相続時精算課税制度で最大2,500万円を非課税にする
相続時精算課税制度は父母または祖父母などから子または孫などに対し財産を贈与した場合に利用できる節税方法となっており、最大2,500万円まで課税額を控除することができます。
後述する暦年課税制度と併用することで最大2,610万円まで控除できることから、節税効果が高いため贈与税が高額になった場合に検討しておきたい制度です。
ただし2,500万円を超えた課税額に対して20%の税率がかかるうえに相続税が増えてしまう可能性もあり、さらに一度利用してしまうと暦年課税制度は使えなくなってしまいます。
そのため日常的に贈与を受けている場合や親の資産が多い場合には、慎重に判断する必要があります。
【参考サイト:No.4103 相続時精算課税の選択|国税庁】
暦年課税制度で毎年110万円ずつ非課税で贈与する
暦年課税制度は毎年110万円まで贈与税を非課税にできるという制度となっており、土地の贈与でも利用可能です。
課税額が110万円以下の土地であれば非課税で名義変更できる一方、贈与後の一定期間内に親が亡くなってしまうと相続税として加算されてしまうという注意点もあります。
相続税として加算される期間は次のように定められています。
被相続人の相続開始日 | 加算対象期間 |
---|---|
~令和8年12月31日 | 相続開始前3年以内(死亡の日からさかのぼって3年前の日から死亡の日までの間) |
令和9年1月1日~令和12年12月31日 | 令和6年1月1日から死亡の日までの間 |
令和13年1月1日~ | 相続開始前7年以内(死亡の日からさかのぼって7年前の日から死亡の日までの間) |
【参考サイト:No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)|国税庁】
名義変更をしない場合のリスク
土地の名義変更には手間と費用がかかってしまいますが、登記申請や税金の支払いをせずに親の土地を子が利用することには大きなリスクがあります。
場合によっては後から課税されるなど大きな損失に繋がる可能性もありますので、必ず名義変更することをおすすめします。
この章では名義変更をしない場合のリスクについて、解説します。
土地の売却などができない
土地の所有者は全部事項証明書に記載されているかどうかで判断することになるため、名義変更しなければ所有権を主張することはできません。
そのため将来土地を売却しようとしても土地の所有者ではないため売却ができず、買主と売買契約を締結する際にトラブルが発生することもあります。
また固定資産税の納税通知書が子ではなく親に届いてしまうことから、支払いの遅延や滞納によって土地が差し押さえられる可能性も大きなリスクです。
相続人同士でトラブルになる
名義変更によって土地の所有権を得ていない場合、長年親から受け継いだ土地を活用していたとしても他の親族が土地の名義変更をしてしまうと土地を使えなくなってしまいます。
こうしたトラブルは贈与契約書や遺産分割協議書があれば解消できるケースもありますが、何十年も前に土地を受け継いで使用している場合には書類が残っていないことも多いです。
相続人が亡くなり相続権が子や孫に移動してしまうとさらに事実確認が難しくなってしまいますので、親族間でトラブルを起こさないためにも名義変更は必要です。
罰則を受ける可能性がある
令和6年4月1日から相続登記が義務化され、相続及び遺贈を受けた人は取得を知った日から3年以内に名義変更をしなければなりません。
名義変更せずに放置した場合は10万円以下の過料が適用となる可能性があり、既に土地を受け継いでいる人も令和9年4月1日までに相続登記をすることが義務付けられています。
このことからも、相続によって土地を取得した場合はなるべく早く名義変更することがおすすめです。
【参考サイト:相続登記が義務化されました(令和6年4月1日制度開始) ~なくそう 所有者不明土地 !~:東京法務局】
まとめ
土地の名義変更をすることで所有権を主張できるため、手間や費用がかかっても必ず名義変更はすべきだといえます。
しかし親から子へ土地を継承させるためには生前贈与か相続という方法があり、どちらも必要書類の準備と税金が発生してしまいます。
また他の親族が土地の名義変更について納得しないケースも多く、トラブルが起きやすいことも知っておく必要があります。
そのため親の土地を名義変更する際には手続きの流れと税金を含めた費用を確認し、さらに親族全員が納得した上で登記手続きをすることが大切です。
なお、名義変更後の土地を活用する予定がない場合は売却の検討がおすすめです。
空き家パスは司法書士と連携し登記のサポートを提供していますので、名義変更前から売却を検討することができます。
土地の名義変更や土地の活用でお困りの人は、空き家パスへお問い合わせください。