古い家に住むデメリットは?対策と手放す方法・注意点を解説
築年数の経った古い実家を相続し、住み続けるかどうか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
古い家には、家族の思い出が詰まっている一方で、老朽化や耐震性・断熱性の不足といった問題を抱えることが少なくありません。これらの問題は、安全性や快適さに影響するだけでなく、修繕費用やメンテナンスの負担にもつながります。
さらに、空き家状態にしておくことで発生するリスクや管理の手間も頭を悩ませる要因です。
そこで本記事では、古い家に住む際のデメリットとその対策について詳しく解説します。あわせて、適切な処分方法や注意点も紹介しますので、これから実家の管理や活用を考えている方はぜひ参考にしてください。
- 古い家に住むデメリットと対策
- 古い家を処分する方法と注意点
目次
古い家に住むデメリット
古い一戸建ては価格だけでなく固定資産税も安く抑えられるというメリットがありますが、その分他の維持費が高くなったり新築よりも管理する工数が増える可能性があります。
また間取りや外観のデザインはその時代に合った暮らしで設計されていますので、リノベをしなければ暮らしにくい部屋になっているケースも多いです。
これから古い家に住んだり購入する際には、どのようなデメリットがあるのかを事前に把握し納得した上で検討する必要があります。
この章では古い家に住むことのデメリットについて、解説します。
老朽化で耐震性などの問題がある
建築されてから年月が経過している家は見た目がキレイでも内部が劣化や破損していることもあり、リフォーム費用が予想以上にかかる点がデメリットといえます。
たとえば屋根や壁紙が劣化してキズやヒビがあると雨漏りの原因になりやすく、シロアリ被害があると家の耐久性は大きく下がってしまいます。
特に耐震性が劣化している家は安全に暮らすことができなくなってしまうため耐震補強工事が必要となり、状態によっては新築と変わらない費用がかかってしまうことも少なくありません。
これ以外にも金融機関の審査が厳しくなることで資金が調達しにくくなり、物件の購入やリフォーム費用を自己資金で捻出しなければならないというデメリットもあります。
このように、築年数が古い家には安全面や資金面に注意点があることを知っておく必要があります。
なお1981年5月31日以前に建築されている物件は現在の耐震基準を満たしていない「旧耐震基準」であることから、耐震性についてはしっかりチェックする必要があります。
耐震基準は建築基準法の改正によって細かく変更されていることから、以下の表を参考にしてください。
建築された年月 | 耐震基準の内容 |
---|---|
1981年5月31日以前 | 震度5強程度の揺れでも建物が倒壊せず、破損したとしても補修することで生活が可能な構造基準 |
1981年6月1日から2000年5月31日まで | 震度6強、7程度の地震でも倒壊しない水準 |
2000年6月1日以降 | 震度6強、7程度の地震でも倒壊しない水準に加え、建物の平面を4分割しその各部分に耐力壁をバランスよく配置することが求められる |
設備や間取りが現在の暮らしと合っていない
昭和のインテリアやキッチン、トイレ、バスルームはレトロな雰囲気を持っていますが利便性が高くないことが多いです。
さらにこうした設備以外にも和室や段差のあるリビングはバリアフリーや生活動線を重要視する現代の生活にマッチしておらず、リフォームをしなければストレスを感じる生活になってしまいます。
特に高齢者や小さな子供は転倒やヒートショックといった不安を抱えることになるため、家族全員が安心して暮らすためにはリフォームによって設備や間取りを変更する必要があるため大きなデメリットといえます。
管理状態によっては長く住めない場合がある
国土交通省の資料によるとRC造の住宅は100年、木造住宅は65年が寿命とされていますが、不動産の残存価値を計算する耐用年数ではRC造は47年、木造住宅は22年です。
つまり築年数が古い建物ほど寿命は短くなり将来の売却価格は下がってしまうことが分かりますが、築年数が浅くても管理されずに放置されていると劣化が進み安全に住めない状態になってしまいます。
高機能の新築住宅でない限り住宅は掃除などのメンテナンスを定期的にしなければ快適な住環境を維持できなくなってしまうため、空き家や放置されている古民家などは注意が必要です。
【参考サイト:耐用年数(建物/建物附属設備)】
防音性・断熱性に不安がある
防音性が低いと車や電車の走行音など外部の音が気になる生活となり、室内の音も外に漏れやすくなります。
特に夜間は音が響きやすいため近隣住民とトラブルになることもあるため、生活音を気にしながら暮らすことになる点がデメリットです。
一方、断熱性も快適に生活するためには重要なポイントとなっており、断熱性が高くなければ夏は暑く冬は寒い住宅になってしまいます。
家の状態が悪ければ湿気がこもりやすくなりダニやカビが発生することで健康被害が起きるため、注意が必要です。
このように古い家に住む前には防音性や断熱性をチェックする必要がありますが、実際に物件を見ても判断できないケースも多く不動産会社や売主からインスペクションなど家の状態が分かる資料をできる限り入手することが大切です。
害虫や害獣に悩まされる
シロアリ被害は家に大きなダメージを与えることになりますが、シロアリ以外にもコウモリやアライグマなどが住みついてしまうと糞尿による健康被害が発生してしまいます。
さらに害獣によっては重要な躯体をかじって破損させることがあり、その結果耐久性が劣化し倒壊のリスクを抱えてしまいます。
そのため害虫や害獣を見つけた場合は速やかに対応しなければなりませんが、コウモリやアライグマなどは条例により指定業者でなければ処分することができない上に、一度住み着いてしまうと何度も被害が発生することもあります。
このように害虫や害獣は寄り付かないよう対処することが重要になりますが、長年空き家になっている中古住宅はこうした害虫や害獣の巣になっているケースも多いです。
つまり古い家を取得した時点でこうした問題を抱えている可能性があるといえ、大きなデメリットです。
売却したい時に売れない・安い可能性がある
築年数が古い中古住宅は買い手が耐震性や耐久性に不安を感じることが多く、国土交通省が公表している資料によると「耐震性が不安」「設備の老朽化が不安」といった点が気になるそうです。
将来的に家を売却する可能性がある場合、次の購入者を探すのに時間がかかったり手放せなかったりする可能性があります。
さらに築年数が経過することで資産価値も低下するため、購入時よりもさらに安い金額でなければ売却できなくなってしまいます。
場合によっては住宅ローンの残債よりも売却価格が安くなってしまうことで金融機関の許可がおりず、買い手が見つかっても契約できないこともあり得ます。
このように古い家は売却したいと考えてもスムーズに買い手が見つからない上に、想定よりも売却価格が安くなってしまう点がデメリットといえます。
【参考サイト:既存住宅の流通促進に向けて】
古い家のデメリット対処方法
古い家には新築にはないデメリットがあり、安全に暮らすためにはコツがいります。
日本の住宅は築年数が古くなっても修繕することで安全に暮らすことができるようになり、自分好みの間取りやデザインにカスタマイズすることも可能です。
その一方で物件の状態によってはどのような対処をしてもデメリットを解消できないこともあるため、スムーズに家を手放す方法についても知っておく必要があります。
この章では古い家のデメリットを解消する方法について解説しますので、これらから古い家を購入する人はチェックしてください。
リノベーションやリフォームをする
古い家が抱える大きな問題として耐震性や耐久性、デザインの古さがありますがリノベーションやリフォームによってほとんどの問題点を解消することができます。
そのため中古住宅を購入する際には物件購入費用と諸費用だけでなくリフォーム費用も資金計画に組み込む必要があり、内覧時にはどの部分をリフォームすべきかチェックしておくことがポイントです。
特に水回りや給湯器をリフォームすることで機能性だけでなく省エネ性も向上するため光熱費も削減できるようになり、同居人数が多い世帯でも余裕をもって生活できるようになります。
このように古い家を購入して住むのであれば、リノベーションやリフォームはセットで考えることが大切だといえます。
なおリフォーム会社によっては施工部分に保証が付与されたり施工期間が異なるケースもあるため、必ず複数のリフォーム会社に見積を依頼することが大切です。
中古住宅を購入した際のリフォームイメージとして、以下の価格表を参考にしてください。
各設備 | リフォーム内容 | 相場 | リフォームイメージ |
---|---|---|---|
水回り | キッチン | 70~100万円 | 既存キッチン解体→新設 |
水回り | 浴室 | 70~120万円 | 既存浴室解体→新設 |
水回り | 洗面所 | 約20万円 | 既存洗面台撤去→新設 |
水回り | トイレ | 約20万円 | 既存トイレ撤去→新設 |
内装 | 壁紙・クロス | 20~80万円 | 1.2万円/㎡が相場 |
内装 | 床・フローリング | 30~90万円 | 1.5万円/㎡が相場 |
内装 | 間取り変更 | 30~60万円 | 和室→洋室(30万円)、1室→2室(20万円)、6畳部屋増築(60万円) |
外壁 | 塗装・張り替え | 約100万円 | 木造2階建ての場合 |
屋根 | 塗装・葺き替え | 約50万円 | 屋根面積100㎡の場合 |
戸建て全面リフォーム | (耐震&断熱リフォーム含まない) | 500~600万円 | 家屋内外全てをリフォームした場合 |
戸建て全面リフォーム | (耐震&断熱リフォーム込み) | 500~800万円 | フルリフォーム+耐震、断熱リフォーム |
DIYをする
大掛かりなリフォームやリノベーションは予算オーバーの原因にもなりかねませんので、なるべく自分で修繕する方法も検討することが大切です。
たとえば壁紙の張替えやベランダの防水塗装はDIYでも実施することができ、工賃がかからないことから費用を大幅に削減することができます。
これ以外にもDIYに慣れている人であれば玄関のタイルや障子の張替え、テラスの設置を自分で施工することができ、数万円〜数十万円のコストダウンも可能です。
最近ではDIYの方法を詳しく公開しているYoutubeやホームセンターも多く、中古住宅をリフォームする際には知っておくべき情報といえます。
ただしDIYに慣れていない人が施工すると仕上がりにムラがでてしまったり本来の断熱性や防水性が発揮されないこともあり、家の耐久性が低下する原因にもなりかねないため注意が必要です。
そのため機能面に影響がでない部分はDIYを選択し、重要な部分はプロに依頼するのがおすすめです。
建て替える
耐震性や耐久性をリフォームによって高めようとするとリフォーム費用が高額になりやすいため、いっそのこと新築に建て替えるオーナーも多いです。
建て替えは家族全員で退去して仮住まいし、同じ土地で新築を建てることになります。
そのため建築費以外にも2回分の引っ越し費用と仮住まいの家賃、測量費や建物解体費用が発生することになりますが、古い家が抱えるデメリットを解消した上で新生活をスタートすることができるようになります。
建て替えにかかる費用はリフォームよりも高くなりやすいですが、資金計画に余裕があれば検討すべき方法といえます。
なお測量費や解体費用を負担してくれる建築会社もあるため、建て替えを検討する際には建築会社を慎重に選ぶことがポイントです。
売却する
リフォームやリノベーションでは状況を改善できず建て替えの費用が捻出できない場合は、家を売却するのがポイントです。
不動産売却は不動産会社に物件の査定を依頼し、査定額をベースに販売を依頼する不動産会社と売却価格を決定します。
査定額は相場に近いケースがほとんどですが、住宅ローンの有無や譲渡所得税の税額によっては相場よりも高い売却価格に設定することもあります。
その一方で建物の状態が悪いと中古住宅として売却することが難しく、古家付き土地として販売することも検討しなければなりません。
このように不動産売却には様々なポイントを抑える必要があるため、複数の不動産会社から売却プランの提案を受け最適な方法を選択することが重要です。
不動産会社とは販売を依頼するタイミングで媒介契約を締結することになりますが、契約内容によって依頼できる社数や内容が次のように異なります。
契約の種類 | 同時契約社数 | 自己発見取引 | 販売報告頻度 |
---|---|---|---|
専属専任媒介契約 | 1社 | 不可 | 1週間に1度 |
専任媒介契約 | 1社 | 可能 | 2週間に1度 |
一般媒介 | 制限なし | 可能 | 規定なし |
古い家を処分する方法
相続や贈与によって古い家を取得したものの、自己利用や賃貸に出すことなく放置しているオーナーも多いですが、古い家を放置していると火災や倒壊のリスクが高くなり近隣住民に悪影響を及ぼすこともあります。
場合によっては「空家等対策の推進に関する特別措置法」に定められる特定空き家に認定されてしまい、強制解体の行政代執行や固定資産税の税制優遇撤廃を受ける可能性もあります。
そのため古い家を活用しないのであればなるべく早くに処分することをおすすめしますが、処分方法はいくつかあるため適切な方法を選ぶことがポイントです。
この章では古い家を処分する方法について詳しく解説します。
【参考サイト:空家等対策の推進に関する特別措置法】
そのまま売却する
一番手っ取り早い方法は現況のまま中古住宅として売却する方法です。
建物の残存価値が残っていればその分販売価格を高く設定することができ、解体費用もかからないことからより手残り額も多くなります。
そのためまずは中古住宅の販売に強い不動産会社に、中古住宅として売却できないか相談、依頼することがポイントです。
ただし中古住宅を検討している買い手は建物の耐久性や耐震性を気にするケースが多いため、築年数が古い場合は販売期間が長引く可能性も高いです。
建物を解体して更地にして売却する
建物を解体して更地にすることで物件の奥側が見えやすくなり、土地全体を見渡すことができるようになります。
築年数が古く資産価値がほとんど残っていない場合はこのように建物を解体してしまい、土地購入を検討している買い手をターゲットにした販売方法も有効です。
買い手が解体費用を負担する必要がないため資金計画が立てやすくなり、早期売却の可能性が高くなるという特徴もあります。
一方、解体費用を負担することになる上に土地として売却する場合は確定測量が必要になるケースも多くなり、売却の諸費用が増えてしまうため注意が必要です。
さらに建物を解体して1年以内に処分しなければ固定資産税の税制優遇が撤廃されてしまい、固定資産税が増加してしまうというリスクもあります。
このように建物を残して中古住宅として売却するか土地として売却するのかは慎重に判断することがポイントとなるため、不動産会社から売却プランの提案を受けながら検討することをおすすめします。
相続放棄する
相続放棄とは被相続人が所有する全ての財産について相続を放棄する行為のことです。
相続開始を知った時から3ヶ月以内に必要書類を集めて家庭裁判所に提出し、裁判所から許可を得る必要がありますが受理されると活用が難しい不動産の維持管理から解放されることになります。
そのため遠方の実家などを相続する可能性がある人は、相続放棄を含めて検討するケースも多いです。
このようにメリットが多い相続放棄ですが不動産以外の財産も放棄することになるため、注意点もあります。
国や自治体に寄付する
空き家は2013年に820万戸を超え、現在も増加傾向にあることから空き家増加が大きな課題となっている自治体も多く、解体の補助金など様々な制度が公開されています。
しかし空き家や空き地を有効活用したりスムーズに処分できないことも多く、所有者にとっても大きな問題です。
そこで活用していない中古住宅や土地を自治体に寄付する方法があり、必要書類を自治体に提出して審査を受け、承認を受けることで実施できるようになります。
そのためどのような不動産であっても寄付できるわけではありませんが、活用できない不動産を所有している人は相談することをおすすめします。
国に寄付する場合は「相続土地国庫帰属制度」という制度を利用することになり、令和5年4月27日から開始された制度です。
相続等によって土地の所有権を取得した相続人が一定の要件を満たした場合に土地を手放して国庫に帰属させることを可能とする制度で、管理費用10年分相当の負担金を納めなければならないなどいくつかの条件があります。
こうした寄付制度は内容を正しく理解した上で活用する必要がありますので、不動産会社や各自治体などに早い段階で相談することがポイントです。
【参考サイト:法務省:相続土地国庫帰属制度について】
【参考サイト:空き家等の現状について】
専門の不動産買取業者に買い取ってもらう
不動産を売却する場合、不動産会社に販売を委託して買い手を探す「仲介」と不動産会社が直接購入する「買取」があります。
大きな違いは次のようになり、確実に処分したい人に買取は向いていることが分かります。
仲介と買取 | 売却価格 | 販売期間 | 仲介手数料 |
---|---|---|---|
仲介 | 自由に設計可能 | 買い手が見つかるまで継続 | 発生する |
買取 | 買取業者の買取額 | ほとんどなし | 発生しない |
また中古住宅を専門に買取している不動産買取業者も多く、築年数が古い空き家でも積極的に買取してくれます。
そのため買取を選ぶ際にはなるべく多くの不動産会社に買取査定を依頼し、買取価格や担当者の対応などをチェックすることが大切です。
不動産買取のメリットはスピーディーに売却できるという点だけでなく、現況のまま処分できるという点もあります。
買取業者は買取した物件を修繕して再販売し、利益を得ることを目的としています。
つまり建物を解体したり残置物を処分する必要がなく、さらに仲介をしていないため仲介手数料もかかりません。
このことからも買取は売主の手間がかからない上に諸費用を抑えられるというメリットがあり、処分できない中古住宅を所有しているオーナーに向いている売却方法といえます。
まとめ
築年数の経った古い実家を相続し住むためには、設備や間取りのチェックのほかリフォーム費用がどのくらいかかるのかを把握する必要があります。
物件によっては経年劣化によって耐震性や耐久性が低下し安全に生活できないケースもあり、耐震補強工事で数百万円かかることも珍しくありません。
また維持管理の工数や費用が発生してしまうため、相続放棄や寄付といった方法で所有権を放棄することも検討する必要があります。
不動産買取によって処分するという方法もありますので、不動産会社に相談し最適な方法を選ぶことがおすすめです。
空き家パスは、全国の空き家の買取を行なっています。相続したけれど住むことができない、遠方で管理が難しいといったご相談も多く受けて対応させていただいております。相続した古い家を手放す方法についてお困りの場合は、ぜひ空き家パスへご相談ください。