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不動産を相続することになったら?必要な手続きや費用、いらない場合の対処方法について解説

不動産 相続

実家や活用していない不動産を相続するケースは増えていますが、遺産を相続する際のポイントを事前に押さえていなければ思わぬトラブルに巻き込まれることがあります。
特に相続人が多い場合や被相続人が遺言書を残している場合は遺産分割協議が長期間となってしまい、スムーズに相続登記できないことも少なくありません。
また、不動産相続は土地や建物の価値を正しく見極めた上で評価額を算出することになりますので、相続人全員の合意を得るためには正しい評価方法や計算方法を知っておくことが大切です。
この記事では不動産の相続手続きの必要書類や相続財産の遺産分割方法、相続登記にかかる費用と相続税の計算方法、不要な不動産を相続してしまった場合の対処方法について解説します。
これから不動産などの財産を相続する予定がある人は参考にしてください。

この記事で分かること

  • 不動産の相続手続きにおけるステップ
  • 相続財産を分割する方法
  • 取得した不動産が不要となった場合の対処方法

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不動産の相続に必要な手続き

不動産を相続する際には被相続人が遺言書を残していないか確認し、法定相続人全員で遺産分割書の作成について協議する必要があります。
不動産を相続する相続人が決まれば期日内に相続登記を行い、所有権を移転します。
名義変更の登記は被相続人の死亡を知った日から3年以内、相続税の納付は10ヶ月以内と定められています。
そのため相続人の数によっては被相続人の死亡直後に遺産分割の協議をスタートしてもそれぞれの申請がギリギリになってしまうケースもありますので、この章で解説する遺産相続の流れを事前に確認しておくことが重要です。

遺言の有無を確認する

遺言書は被相続人が特定の人に財産を相続させたり遺贈させる場合に作成することが多く、大きく分けて「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」があります。
このうち自筆証書遺言は内容の自由度が高く被相続人の要望を採用しやすい遺言書ですが不備が発生しやすく、法的に無効となることも多いです。
一方、公正証書遺言は公証人が立ち会いながら作成し、原本は公証役場に保管されるため確実に遺言を残したい場合に使われる方法です。
そのため相続人はまず自宅だけでなく公証役場への問い合わせも行い、遺言書の有無を確認する必要があります。
なお、遺言書の内容は原則有効ですが遺言者に錯誤があったり脅迫によって作成されるなどの問題があった場合は、相続人が家庭裁判所に遺言無効確認調停または遺言無効確認訴訟を申し立てることにより無効にすることもできます。

相続人を確定する

相続人を確定するためにはまず市区町村役場から戸籍謄本を取り寄せ、法定相続人になり得る親族を調査します。
法定相続の権利がある親族が海外にいたり死亡している場合は特定するだけで数年かかることも珍しくなく、さらに取り寄せる書類は被相続人が生まれてから死亡するまでの戸籍謄本となるため被相続人の享年によっては膨大な量になることもあります。
このことからも、手間をかけたくない人には司法書士など専門家に依頼し、戸籍の調査から遺産分割協議のとりまとめ、協議書の作成までを委任するのがおすすめです。

相続財産を特定し財産目録を作成する

市区町村役場で固定資産税評価が記載されている書類を入手し、相続財産を特定します。
自治体によっては財産を一覧で確認できる名寄帳が管理されていることもありますので、被相続人の住民票がある自治体に出向いて相続財産を調べ、対象となる不動産を記載した財産目録を作成します。
法定相続人の特定と財産目録の作成ができれば遺産分割協議を実施できますので、なるべく早く準備することがポイントです。

遺産分割協議を行う

法定相続の権利を持つ親族が一同に会し、遺産分割協議は実施されます。
遺産分割は法定相続通りに実施するのが原則となっており、配偶者は常に相続人となり、子供は第一順位です。
たとえば相続税評価額が3,000万円の場合は配偶者が1,500万円、子供が1,500万となり、子供が2人の場合は1,500万円を折半した割合となります。
配偶者も子供もいない場合の順位は親→兄弟姉妹となることから、自分の順位が何番目にあたるのかを親族全員が把握しておくことが大切です。
相続は不動産だけでなく株や証券、預貯金も対象となるため、同じ価値の財産でもどのように分配するのかで揉めることも少なくありません。
そのため遺産分割協議は司法書士や税理士といった専門家が立会うケースも多いです。

財産の名義変更(不動産は相続登記)を行う

遺産分割協議によって相続の持分割合と相続する財産の内容が決まれば書類にまとめ、相続人全員の署名捺印によって遺産分割協議書が完成となります。
財産の名義変更は遺産分割協議書の内容に沿って行われることから、後からトラブルが起きないよう全員で念入りに確認することがポイントです。
特に不動産の名義変更は一度登記されてしまうと変更する際に膨大な工数がかかってしまうため、相続登記によって所有権を取得する相続人は注意が必要です。
なお、相続登記については令和6年4月1日より義務化されており、相続を知った日から3年以内に登記しなければならなくなりました。
この制度は令和6年3月31日以前に相続した人に対しても有効であり、令和9年3月31日までに相続登記することが求められています。
万が一期日内に登記しなかった場合は10万円以下の過料が科せられることもありますので、相続登記は必ず期日内に実施することをおすすめします。
【参考サイト:東京法務局

相続税の申告と納付を行う

相続によって財産を所有する人が決まった場合、相続を開始した日から10ヶ月以内に相続税を申告し納付しなければなりません。
そのため相続税はなるべく早い段階で確認しておき、資金を準備しておくことが大切です。

相続した不動産を分ける方法

相続対象の財産が法定割合通りに分割できないことも多く、相続トラブルの原因になることもあります。
特に不動産は資産価値が高くても売却しない限りは現金にできないことから、相続財産に不動産がある場合は注意が必要です。
分割がうまくまとまらない時は「代償分割」や「換価分割」という方法があり、不動産を含む遺産分割をする際には有効な方法です。
これ以外にも不動産を共有で取得するという方法もありますので、この章で詳しく解説します。

代償分割

「代償分割」は不動産の価値が他の財産に比べて大きい場合に使われる分割方法で、不動産の相続人が他の相続人に金銭を渡すことで分割とみなされます。
たとえば兄弟2人で遺産を分割する際に現金2,000万円、不動産の評価額が2,000万円だった場合は問題なく分割できますが、現金が1,000万円で不動産が3,000万円だと持分割合通りに分割できないことになります。
このようなケースでは不動産を取得した相続人がもう一人の相続人に1,000万円支払うことで帳尻を合わせることができます。
代償分割はこのように不動産の相続人がある程度資金を保有している場合に、有効な方法です。

換価分割

代償分割は不動産を相続した人に資金があれば可能ですが、資金がなければ持分割合通りの帳尻合わせができなくなってしまいます。
そこで不動産を売却し、全て現金化して遺産分割する方法があります。
この方法は換価分割と呼ばれ、スムーズに遺産分割をしたい人におすすめです。
ただし売却価格によって相続財産の額が変わってしまうことから不動産の所有者が独断で売却価格を決められない可能性があり、買主との契約が頓挫してしまうリスクもあります。
こうしたリスクを避けるためにも、換価分割を選択する際には複数の不動産会社から査定書を入手し、相続人全員が納得できる売却価格のラインを決めておくことが大切です。

持分割合で共有名義

不動産の相続人が資金を出すことも不動産を売却することもしたくない人は、持分割合に合わせて不動産の所有権を分割する方法が向いています。
不動産を共有名義にする方法でも遺産を分割することになり、貯金を崩すことも不動産を売却する必要もなくなります。
思い入れのある不動産を取得したり不動産を活用する予定のある場合にこの方法は選ばれやすいですが、売却したり活用する際には名義人全員の合意が必要です。
そのため単独で活用できなくなるというデメリットがあることも知った上で、共有名義にすべきか検討することをおすすめします。

現物分割

現物分割は現物の不動産をそのまま分ける方法で、遺産分割の中ではもっともシンプルです。
たとえば兄弟4人で2,000万円の価値がある不動産と現金4,000万円を分ける場合、不動産を各相続人が1/4所有し現金を一人あたり1,000万円で案分します。
手続きが簡略化できる上に遺産分割協議をスピーディーに完了させられるというメリットがあるため採用されるケースは多いですが、分割しにくい不動産や株式など価値が変動しやすい遺産があると揉めやすくなるというデメリットもあります。
遺産の種類がシンプルだったり遺産分割の内容に法定相続人がおおむね納得しているケースで使いやすい方法となりますので、他の方法と比較検討して選択することが重要です。

相続した不動産の評価方法

相続税や贈与税における不動産の価値は購入した金額ではなく、不動産評価額によって算出されます。
不動産評価額は土地であれば路線価、建物は固定資産税課税額が基準となります。
どちらも税理士や会計士に依頼することで把握することができますが、公開されている情報をベースに自分で計算することも可能です。
この章では相続した不動産の評価方法と計算方法について解説しますので、参考にしてください。

土地の評価方法

土地の評価を算出する方法に路線価方式と倍率方式があり、それぞれ次のような特徴があります。

路線価方式

路線価とは道路に対する標準的な宅地の価額を表した指標で、国税庁の路線価図・評価倍率表で調べることができます。
路線価方式はこのデータを使って評価額を算出する方法のことで、たとえば路線価図に500という数字があれば50万円/㎡を土地の面積に掛け合わせた数字が評価額です。
さらに土地形状や前面道路の広さによって価格を補正する奥行価格補正率や借地権割合によって価額は補正されることで、適正な評価額を計算することができます。
多くの市街地で路線価は設定されていますので、路線価方式は税理士や会計士も採用する代表的な計算方法といえます。
【参考サイト:財産評価基準書

倍率方式

山奥や郊外には路線価が設定されていないこともあり、その場合は倍率方式を使います。
倍率方式は固定資産税評価額に国税庁の路線価図・評価倍率表で公開されている評価倍率を乗じて相続税評価額を算出する方法です。
地目や地域によって適用する倍率は異なるため、同じエリアにある土地でも評価額が変わることもあります。 
特に地目による変動は大きいので、相続する土地の地目は事前に調べておくことをおすすめします。

家屋の評価方法

家屋の評価額は固定資産税の課税明細書に記載されており、毎年5月ごろに郵送される納付書でも確認することができます。
課税明細書や納付書がなければ自治体で入手できる名寄帳でもチェックできることから、家屋の評価額は土地に比べて比較的簡単に調べられることが分かります。

相続でかかる費用

不動産を相続する際には相続登記が必須ですが、控除しきれなかった課税額が発生した場合は相続税もかかります。
そのため相続開始前にどのくらいの費用が必要になるのかを調べておくことがポイントです。
この章では相続でかかる費用について、解説します。

相続登記にかかる費用

不動産を取得する際には登記するために登録免許税を支払う必要があり、相続登記においても同様です。
相続登記はまず課税額の下3桁を切り捨て、税率の0.4%を掛け合わせます。
そして算出された税額の下2桁を切り捨てたのが相続登記に必要な登録免許税となります。
ただし司法書士などに登記を依頼する場合は別途報酬が必要となり、地域によって1万円〜10万円ほどかかるため注意が必要です。

相続税

相続税を計算する際にはまず相続財産の課税額を合計し、基礎控除で控除しきれない課税額を確認する必要があります。

相続税における基礎控除は3,000万円+法定相続人の数×600万円で計算することができ、たとえば配偶者と子ども3人の4人家族の場合、3,000万円+2,400万円=5,400万円が基礎控除です。

そして基礎控除した後に課税額が残れば対応する税率を掛け合わせ、相続税を計算することになります。

つまり基礎控除によって課税額が0円以下になれば相続税はかからないことになります。

なお、相続税の税率と控除額は課税額によって次のように異なりますので、参考にしてください。

控除後の課税額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
1,000万円超から3,000万円以下 15% 50万円
3,000万円超から5,000万円以下 20% 200万円
5,000万円超から1億円以下 30% 700万円
1億円超から2億円以下 40% 1,700万円
2億円超から3億円以下 45% 2,700万円
3億円超から6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

たとえば相続した不動産の控除後課税額が3,000万円だった場合、3,000万円×15%-50万円=400万円が相続税となります。

【参考サイト:No.4155 相続税の税率|国税庁

相続した不動産を使わない場合どうすべき?

不動産の相続は立地が良かったり残存価値が高いケースだけでなく、中には有効活用しにくい空き家や空き地を相続してしまうこともあります。
このような不動産を相続してしまうと管理工数や維持費だけがかかってしまうため、所有者にとっては大きな負担です。
しかし不動産を放置していると害虫や害獣の温床になったり火災や倒壊の可能性があるなど、様々なリスクを抱えることになります。
特に倒壊のリスクがある空き家は空き等対策特別措置法で定められる「特定空き家」に認定される可能性があり、認定されると強制解体や固定資産税の優遇措置が撤廃されることもあります。
そのため、相続した不動産の使い道がない場合の対処方法についても調べておくことが大切です。
【参考サイト:国土交通省|住宅:空き家対策 特設サイト

そもそも相続放棄する

相続する前から有効活用しない不動産だと分かっている場合は、相続放棄が有効です。
相続放棄することで相続財産の所有権を放棄する代わりに管理や維持費、負債の責任負担から解放されます。
そのため不要な不動産を相続する予定のケースだけでなく、相続税を払う価値がなかったり維持管理費の負担が大きい不動産に対しても有効な方法といえます。
ただし相続放棄は家庭裁判所の許可が必要な上に他の財産も全て放棄することになり、さらに将来子や孫が相続することもできなくなります。
このようなデメリットを踏まえた上で相続放棄は検討し、後悔のない選択にすることが重要です。

贈与する

相続した不動産を有効活用できる人が身近にいる場合、贈与という選択もあります。
譲渡契約書を締結し正式に所有権移転することで管理責任や固定資産税等の支払い義務がなくなり、さらに不動産も適切に利用してもらえる可能性があります。
ただし不動産の贈与は課税額に対して2%の登録免許税がかかり、さらに課税額に応じた贈与税も発生することも知っておく必要があります。
贈与税の税率は一般贈与財産用と特例贈与財産用で異なりますので、贈与を行う前に以下の表を参考にしてください。
なお、特例贈与財産用に該当するのは直系尊属からの贈与取得となり、一般贈与財産用はそれ以外の贈与所得が該当します。

<一般贈与財産用>(一般税率)

基礎控除後の課税額 税率 控除額
200万円以下 10%
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円
1,500万円以下 45% 175万円
3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円

<特例贈与財産用>(特例税率)

基礎控除後の課税額 税率 控除額
200万円以下 10%
400万円以下 15% 10万円
600万円以下 20% 30万円
1,000万円以下 30% 90万円
1,500万円以下 40% 190万円
3,000万円以下 45% 265万円
4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円

【参考サイト:No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁

寄付する

不動産を国や地方自治体へ寄付する場合、各地方自治体の担当窓口へ事前相談する必要があります。
その後不動産を担当者が調査し、価値があると判断された場合に受け付けしてもらえます。
つまりどのような不動産であっても寄付できるわけではないといえ、ある程度資産価値が残存していることが前提の方法です。

売却する

空き家や空き地、相続した遠方にある実家などを将来的に有効活用しないのであれば、売却がおすすめです。
不動産の売却には「仲介」と「買取」の2種類があり、次のような違いがあります。
売却手段
特徴
仲介
不動産会社が売主から販売の依頼を受け、紙媒体やインターネット広告を通じて買主を募集する方法。

売主が自由に価格設定と引渡し条件を設定できるというメリットがある一方、買主がいつ見つかるか分からないというデメリットもある。

なお、契約が成立した場合は仲介手数料が発生する。
買取
不動産会社が直接買取し、買主となる方法。

査定額がそのまま買取額となり、買取額に合意した時点で契約締結に進むことができることから販売期間がほとんどないという特徴がある。

また仲介で売却できないような山奥の空き家・空き地であっても買取してくれるため、処分できない不動産を所有している人にメリットがある。

ただし買取額は仲介よりも安くなりやすいという点がデメリット。

なお、不動産会社は仲介をしていないため、契約が成立しても仲介手数料はかからない。

まとめ

不動産の相続を円滑に進めるためにも法定相続人の確認や相続財産の事前チェックが大切であり、相続完了までのステップを調べておく必要があります。
また被相続人が不動産以外に財産を所有している場合は遺産分割協議が難航する可能性もあるため、財産の分割方法を決めておくことも大切です。
これ以外にも課税額が高額になると相続税が発生することから、相続後の費用負担や不動産の有効活用を踏まえた上で遺産分割協議書を作成することが不動産相続のポイントといえます。

万が一有効活用できない不動産を相続してしまうと維持費や工数だけがかかってしまいますので、その場合は相続放棄や贈与、寄付、売却といった方法で負担をなくすことをおすすめします。

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