遺産相続の手続きの流れとは?全体スケジュールや期限を解説!
一生に、そう何度も訪れることがないのが遺産相続。
いざという時に慌てない時にも、遺産相続の全体の流れについては把握しておくことが重要です。
そこでここでは、初めて遺産相続するという方に向けて、手続きにどの程度時間がかかるのか、どういった順番で進めるべきなのかを詳しくご紹介していきます。
なかには申請の期限が設けられているものもあるので、そういった注意点もご紹介していきます。
目次
遺産相続の全体スケジュール
まず、遺産相続に関してやるべき手続きは以下の通りです。
1ヶ月以内を目安にやるべきこと
- 法定相続人が誰かを確定させる
- 被相続人の財産を全て洗い出す
- 遺言書がないか確認する
3ヶ月以内を目安にやるべきこと
- 単純承認・限定承認・相続放棄の選択
4ヶ月以内を目安にやるべきこと
- 準確定申告
遺産分割協議がまとまり次第やるべきこと
- 遺産分割協議書の作成
- 遺産分割協議書で遺産の相続を行う
10ヶ月以内を目安にやるべきこと
- 相続税の申告・納付
それそれ、具体的に説明していきましょう。
1ヶ月以内を目安にやるべきこと
まずは、遺産相続を手続きするにあたっての前提条件を確認します。
確認するのは、「相続する権利がある人は誰なのか」と、「相続する遺産は何なのか」です。
法定相続人が誰かを確定させる
まずは、遺産を相続する権利がある人を全て洗い出します。そのためには役所から被相続人の戸籍謄本を全て集める必要があります。戸籍謄本には被相続人の子供や兄弟などが記載されているので、そこから相続人を確定させることができます。
被相続人の財産を全て洗い出す
相続人が分かれば、次は相続する遺産を全て洗い出しましょう。
遺産には、プラスの財産とマイナスの財産があります。相続人はこれらの遺産を全て相続するため、両方を洗い出す必要があります。
- プラスの財産(資産)
- 預貯金・現金
- 不動産
- 株式
- 生命保険金
- 車や時計、家具などの動産物
- マイナスの財産(負債)
- 借金
- 他人の連帯保証人の立場
- 資産価値が乏しく相続することで固定資産税などの負担が大きい不動産
自宅をくまなく探し、貯金口座の通帳や不動産の権利証、生命保険会社の証書などの書類を探しましょう。
また、出てきた遺産はリストにまとめておきましょう。
遺言書がないか確認する
自宅を探す中で、被相続人が残した遺言書がないかも探しておきましょう。
法的に有効な遺言書がある場合は、原則その遺言書に則って遺産の相続を行います。遺言書がない場合や、遺言書の内容に法定相続人全員が異議を唱える場合には、相続人同士でどのように遺産を分割するか話し合う「遺産分割協議」を行います。
3ヶ月以内を目安にやるべきこと
3ヶ月以内に判断しなくてはならないのが、プラスの遺産・マイナスの遺産をどのように相続するかということです。
相続の方法には3種類があります。
「単純承認」
被相続人が残した遺産を全てそのまま引き継ぐ通常の相続方式です。
3カ月以内に申請をしない場合は、全てこの単純承認となります。
「相続放棄」
相続人であることを放棄し、プラスの遺産・マイナスの遺産の全てを放棄します。
借金などのマイナスの遺産が多い場合は相続放棄をおすすめします。
相続放棄を行った場合は当初から相続人であったとみなされなくなり、遺産分割協議などの手続きにも参加する必要がなくなるため、相続人との相続争いにまきこまれたくない方も相続放棄を行う場合があります。
「限定承認」
限定承認とは、プラスの遺産の限度においてマイナスの遺産を相続することを指します。例えば1,000万円の持ち家と1億円の借金がある場合、持ち家分の1,000万円の借金を債権者に支払うことで持ち家を相続することができるという相続方式です。
債務超過が分かっていながらも、相続したい遺産がある場合に有効な相続方式です。
4ヶ月以内を目安にやるべきこと
4ヶ月以内にやらなければならないことは、「準確定申告」です。
被相続人に確定申告しなければならない所得があった場合、被相続人に代わり確定申告し、所得税の支払いを行うのが「準確定申告」です。
被相続人が亡くなってから4ヶ月以内にしなければならず、かつ手続きが煩雑なため、可能であれば税理士に相談しましょう。
遺産分割協議がまとまり次第やるべきこと
遺産分割協議書の作成
相続人同士の遺産分割協議がまとまれば、その内容を遺産分割協議書に記載しましょう。
遺産分割協議書は相続人間や第三者に対して誰がどの遺産を相続するかを示すための書面です。銀行や生命保険会社などに被相続人の残した遺産を受け取る際、必要となるため必ず作成しておきましょう。
遺産分割協議書は、インターネット上にひな形があります。作成した上で相続人全員の署名押印を行い、各自1部ずつ保有しておきましょう。
遺産分割協議書で遺産の相続を行う
遺産分割協議書の作成が完了すれば、その書面をもってそれぞれの遺産を引き継ぎます。
預金であれば金融機関、生命保険であれば保険会社などに連絡し、必要な手続きをしましょう。
土地や建物などの不動産の場合は、被相続人の名義となっているため名義変更の手続きが必要となります。不動産は登記簿という台帳で法務局が管理しており、法務局に対して所有権移転の登記を行います。登記申請は相続人本人が行うことも可能ですが、法律の知識が必要であり手間もかかるため、司法書士に依頼することをおすすめします。
10ヶ月以内を目安にやるべきこと
10か月以内に必ず行わなければならないことが、相続税の申告と納付です。
遺言書もしくは遺産分割協議書に基づいて相続した遺産の分だけ、相続した人が10か月以内に相続税を納めます。
相続税には、「3,000万円+600万円×法定相続人」という非課税枠が定められており、その枠以下の額について相続税は発生しません。
具体的な事例で計算してみましょう。
法定相続人が妻・息子2人計3人で、夫が残した遺産の合計が1億円だったとします。
この場合の法定相続割合は妻50%・息子25%・息子25%ですが、今回の相続では分割できない不動産があり、妻60%・長男20%・次男20%で相続しました。
この場合の計算式は以下の通りとなります。
- 非課税枠の計算
1億円‐4,800万円=5,200万円 - 法定相続分で相続した際の相続税を試算する
妻 5,200万円×法定相続分50%×税率15%‐控除50万円=340万円
長男 5,200万円×法定相続分25%×税率15%‐控除50万円=145万円
次男 5,200万円×法定相続分25%×税率15%‐控除50万円=145万円
法定相続割合から出される相続税の合計:630万円 - 2で資産した相続税を実際の相続割合で割り戻し、負担額を決定する
最後に、相続税の合計630万円を実際の負担割合で割り戻します。
妻 630万円×60%=378万円(※配偶者税額軽減により0円)
長男 630万円×20%=126万円
次男 630万円×20%=126万円
配偶者については、法定相続分もしくは1億6,000万円までのどちらか多い金額までの税額控除があるため、妻にかかる相続税は0円となります。
今回は単純な事例でご紹介しましたが、実際に相続税を計算される場合は税理士など専門家へご相談されることをおすすめします。
相続税を納めれば、無事遺産相続手続きの完了です。
期限までに相続税を支払う現金がなければ・・・
相続税は現金で納めるのが一般的ですが、万が一足りない場合は、相続税を分割払いする「延納」、相続税を不動産や株式などの現物で納める「物納」の申請をすることが可能です。
ただし、これらには条件があるため、あらかじめ税務署へ相談を行うようにしましょう。
まとめ
今回は、遺産相続手続きにかかるスケジュールをご紹介しました。
スケジュールの中でも、以下の3つは対象の場合期限が明確に定められているため、注意が必要です。
- 3ヶ月以内:相続放棄・限定承認の申請(行う場合)
- 4ヶ月以内:準確定申告(被相続人に確定申告必要な所得がある場合)
- 10ヶ月以内:相続税の申告と納付
いざという時にも落ち着いて対処するためにも、日頃から父母や兄弟と遺産相続について話し合う機会を設けておきましょう。