事業用定期借地権とは?期間や他の借地権との違い、メリット・デメリットを解説
事業用定期借地権とは、専ら事業の用に供する建物の所有を目的とした、土地の賃貸借契約をいいます。
これから事業用定期借地を借りようと検討している方は、定期借地権について理解しておく必要があります。
本記事では、事業用定期借地権の契約期間や他の借地権との違いについて解説します。
- 事業用定期借地権とは
- 事業用定期借地権とその他の借地権の違い
- 事業用定期借地権のメリット
- 事業用定期借地権のデメリット
目次
そもそも「借地権」とはどんな権利か?
他人が所有権を有する土地を借りて、建物を建てたりする権利を「借地権」といいます。
一般的に、土地の不動産売買は「所有権」を売買するケースが多く、所有権の場合は、土地の所有者は自分です。
一方、「借地権」の場合は、土地の所有者は他人になるため、土地所有者と借地契約を交わし、地代を支払って、その土地の上に自己所有の建物を建てます。つまり、土地は地主(貸主)のもの、建物は自分(借地権者)のもの、ということです。
旧法借地権と新法借地権
現存する借地権には、平成4年8月1日より以前(平成4年7月31日まで)に契約された借地権を旧法借地権、それより後に契約された借地権を「借地借家法」で定められる、いわゆる新法借地権とに分かれ、それぞれ契約の内容が異なります。
旧法借地権でも契約期間が設定されていましたが、更新が可能なため、更新を続けることで半永久的に土地を借りられる点が大きな特徴です。
旧法借地権では、一度土地を貸したら返還されなくなるといわれるくらい、借地権者(借主)の権利が守られていました。そのため、地主(貸主)側は、土地を貸さなくなってしまうため、土地の有効利用を促進させるために施行された法律が新法借地権です。
さらに、この新法借地権は「普通借地権」と「定期借地権」とに区分されます。ここからは、定期借地権について、特に「事業用定期借地権」について解説していきます。
事業用定期借地権とは
定期借地権とは、契約満了時点に借地契約に基づき借地契約が終了する借地権のことで、「一般定期借地権」「建物譲渡特約付借地権」「事業用定期借地権」の3種類があります。
これら3つの定期借地権は、更新ができないという点が大きな特徴です。契約期間の満了で土地が更地に戻されて確実に返還されます。
事業用定期借地権とその他借地権の違い
ここでは、事業用定期借地権とその他の借地権の違いについて解説していきます。
借地権によって、契約期間や借地の目的に違いがあります。
事業用定期借地権は事業用建物の所有を目的とした借地権
事業用定期借地権は、新法借地権の定期借地権の一つで、借地借家法第23条に定められています。
事業用借地権では、専ら事業の用に供する建物の所有を目的としています。なお、居住用の場合は、事業用定期借地権に当たりません(法23条1項)。そのためアパートやマンション、老人ホームといった賃貸経営の目的では事業用定期借地権を利用することはできません。
事業用定期借地権の内容には、契約の存続期間は10年以上50年未満として契約することで、一般定期借地権と同様に「契約の更新をしない」「建物の築造による存続期間の延長をしない」「契約期間満了時において買取りの請求をしない」とする旨の特約を定めることができます。
厳密には、契約存続期間を10年以上30年未満として借地権を設定する場合は、定期借地権の要件が自動的に適用されるものである一方、契約存続期間を30年以上50年未満として借地権を設定する場合は、上記3つの特約を定めることができます。
事業用借地契約における契約書を作成するうえでは、この相違点に留意する必要があります。
他の借地権と契約期間が異なるの
新法借地権には、「普通借地権」と「定期借地権」があり、さらに定期借地権には、「一般定期借地権」「建物譲渡特約付借地権」「事業用定期借地権」の3種類があることをお伝えしましたが、それぞれ契約存続期間が異なるため注意が必要です。
普通借地権と3種類の定期借地権の契約期間などの違いについて、下表のとおり整理しました。
公正証書で契約する
事業用定期借地権の契約は必ず公正証書によって行わなくてはなりません。
公正証書とは、公証人法に基づき、法務大臣に任命された公証人が証書として作成する文書のことをいいます。公証役場で依頼して作成してもらい、作成した書類には地主(貸主)と借地権者(借主)双方の署名・捺印が必要です。
他の定期借地権と異なり、契約更新や建物買取請求権がある場合もある
事業用定期借地権では、契約期間を30年以上50年未満とした場合、借地権の契約更新や建物買取請求権を特約で「無し」と「定めることができる」のであって、必ず「定められている」わけではないことに注意が必要です。
また、事業用定期借地権は、公正証書以外での契約は無効となります。そのため、契約の更新が認められる普通借地権として扱われるケースもあり、その場合、契約期間満了時に、土地の返還に応じてもらえない可能性があるため注意しましょう。
事業用定期借地権を締結する場合は、事前に契約期間の確認と合わせて特約の内容も当事者間で確認する必要があります。
事業用定期借地権のメリット
事業用定期借地権は、契約期間を10年以上30年未満の短い期間に設定できるため土地活用の計画が建てやすく、建物買取請求権を認めない旨を定めれば契約終了時のコスト負担を回避できることから地主(貸主)にとってメリットが多いとされています。
では、借地権者(借主)にとって、事業用定期借地権を利用するメリットは何でしょうか。
- 初期コストを抑えて事業用の建物を所有することができる
- 他の定期借地権と比べて融通が利く
以下で詳しく解説します。
初期コストを抑えて事業用の建物を所有することができる
事業用定期借地は、土地を購入するよりも全体費用を安く抑えられます。事業用建物を所有する目的で土地を探す場合、借地権は土地の所有権を含まないため、土地そのものを購入するよりも安くなります。また、土地を所有しないため、固定資産税や都市計画税といった土地に関する税金が掛からないため、その分の固定費も抑えられるのです。
他の定期借地権と比べて融通が利く
事業用借地権の存続期間の範囲は他の定期借地権に比べ、10年以上50未満と幅が広いため、建物償却期間との整合が取りやすいといえます。RC造や中高層の建物を借地上に建てることも可能になり、比較的長期の事業展開も可能です。
事業用定期借地権のデメリット
借地権者(借主)にとってデメリットがあることも事実です。具体的なデメリットの内容を見ていきましょう。
- 借地契約が続く限り地代を地主に支払い続けなければいけない
- 公正証書で契約しなければいけないなど、契約方法が煩雑
借地契約が続く限り地代を地主に支払い続けなければいけない
借地権は、特約を設けない限り期間の途中で中途解約することはできません。そのため、事業用定期借地権を締結すると、借地契約が続く限り地代を支払わなければなりません。
公正証書で契約しなければいけないなど、契約方法が煩雑
前述のとおり、事業用定期借地権の契約書は、公正証書によって作成しなければなりません。公正証書は公証役場で依頼して作成してもらう必要があり、公証役場に対しても、手数料の納付が必要になります。他の借地契約に比べ、手続きに手間がかかるといえます。
まとめ
本記事では、事業用定期借地権について、概要や契約期間、他の借地権との違いなどを中心に解説してきました。
事業用定期借地権は定期借地権の中の一つで、借地権者(借主)にとっては、売買によって土地と建物の所有権を取得するよりも、事業用定期借地権付き建物を売買で購入するほうが費用を抑えて事業開始することができます。
空き家パスでは、事業用定期借地権付き建物の売却相談も受けています。ぜひ、処分にお困りの方がいれば空き家パスにご相談ください。