相続放棄の期限と方法を徹底解説。空き家の相続放棄の注意点は?
「相続放棄って聞いたことはあるけど、まだ間に合う?」
「自分で住めないし相続放棄したいけど、手順がよく分からない」
「法律が難しそう。気をつけることはあるの?」
親が亡くなった後、空き家になってしまった実家。現実的な問題に対処しなければならず、お悩みの方も多いでしょう。
そこで、今回は空き家を相続放棄する場合の期限と方法、知っておくべき注意点について詳しく解説していきます。
名義人変更登記についてはこちらをご参考ください。
これで解決!相続した不動産を名義変更する手順をわかりやすく解説。
ぜひ、最後までご覧ください。
目次
空き家の相続放棄とは?
相続放棄とは、被相続人(相続財産を遺して亡くなった人)の財産の相続権一切を放棄すること。
空き家のような不動産や預貯金だけでなく、借金などの負債も含まれます。
相続を放棄することで、他の相続人と遺産分割協議をする必要もなくなります。
相続放棄が認められると、空き家の所有者となる可能性はなくなるので、固定資産税の支払い義務はありません。
空き家の相続放棄には「期限」がある!
空き家の相続放棄には、期限があることをご存じでしょうか?
相続放棄の期限は、相続の開始があったことを知ってから3ヶ月以内。
相続人が配偶者や子の場合、通常は「被相続人が死亡したことを知った時」になります。
手続きが複雑なので、初七日を終えたらさっそく準備に取り掛かると良いでしょう。
【空き家の相続放棄】流れや方法をくわしく解説
空き家の相続放棄の流れは、以下のようになります。
- 管轄の家庭裁判所を確認する
- 必要書類を準備・提出する
- 裁判所から照会書が送付される
- 裁判所が相続放棄を受理する
ひとつずつくわしく解説していきます。
1.管轄の家庭裁判所を確認する
空き家の相続放棄を申し述べる裁判所は、「被相続人の死亡時の住所」を管轄する家庭裁判所です。
どの家庭裁判所で管轄されているかは、以下の 裁判所のホームページで確認してみてください。
裁判所管轄区域 https://www.courts.go.jp/saiban/tetuzuki/kankatu/index.html
2.必要書類を準備・提出する
「相続放棄申述書」に所定の事項を記載します。
記載内容は、主に以下の内容です。
- 申述人の本籍、住所、電話番号、氏名など
- 被相続人の本籍、最後の住所、氏名など
- 申述の理由など
必要な書類などは、以下になります。
- 被相続人の住民票又は戸籍謄本
- 放棄を申請する相続人の戸籍謄本
- 800円分の収入印紙
- 返信用の郵便切手
空き家の相続放棄を申述する相続人と被相続人の関係性によっては、上記とは別に戸籍謄本が必要です。
被相続人の配偶者 被相続人の死亡の記載がある戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本
被相続人の子 被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本
3.裁判所から照会書が送付される
相続放棄申述書を提出すると、裁判所から1週間程度で「照会書」が送付されます。
照会書には、家庭裁判所から申立人に確認したい内容が質問形式で記載されています。
回答書が同封されているので、矛盾がないよう正直に記入して返送しましょう。
以下が主な質問事項です。
- 相続開始があったことを知った日
- 申立てを自分でしたか
- 相続放棄の理由
- 相続放棄は自分の意思かどうか
- 被相続人の財産を処分していないか
- 相続放棄の意思に変わりはないか
4.裁判所が相続放棄を受理する
家庭裁判所が相続放棄の申述を受理すると約10日で「相続放棄申述受理通知書」が送付されます。これで、相続放棄が正式に承認されたことになります。
しかし、債権者によっては「相続放棄申述受理証明書」を要求される場合もあるので、注意しましょう。
証明書の交付申請書は、通知書に同封されています。
空き家の相続放棄で知っておくべき5つの注意点
空き家の相続放棄で、知っておくべき注意点を5つ解説します。
空き家の相続放棄は取り消しできない?
裁判所に受理される前なら「取り下げ」の手続きをとれば、空き家の相続放棄の申述をなかったことにできます。
しかし、相続放棄の申述が受理された後の撤回はできません。
他の相続人や被相続人の債権者といった、利害関係者の混乱を招くからです。
ただし、詐欺や脅迫によって相続放棄させられた場合など、取り消しができるケースもあります。
書類の不備でも再申請できない
相続放棄は、たとえ書類の不備でも再申請できません。
家庭裁判所に提出し却下された場合、もう一回書き直して提出といったことは認めらないのです。
空き家の相続放棄の申し立ては、慎重に行う必要があります。
空き家の相続放棄をしても相続権は移転する
相続の順位は、以下になります。なお、配偶者は常に相続人となります。
- 子(養子含む)
- 直系尊属(親・祖父母など)
- 兄妹姉妹
空き家の相続放棄をしても、相続権は次の順位へと移転します。
つまり、相続放棄は第3順位まで全員が手続きする必要があるのです。
自分が相続放棄した場合、第3順位の親族まで連絡しなければなりません。
相続の順位を考えずに手続きを進めると、親族間のトラブルに発展することもあるので、注意が必要です。
被相続人の財産を処分すると相続放棄できない?
相続人が相続を開始したとわかっていながら財産を処分した場合、「法定単純承認」と言って自動的に相続されたとみなされます。
そうなると、相続放棄申述は受理されません。
被相続人の財産を隠した場合も同様です。
葬儀やお墓の購入費用に使ったなどのケースは別ですが、常識的な規模の場合になるので、注意が必要です。
相続財産にならない財産もある
相続人の「固有財産」は、放棄しなければいけない財産には該当しません。
固有財産とは、相続などによって得た財産と区別する必要があるものを言います。
以下が固有財産として挙げられます。
- 生命保険
- 退職金
- 被相続人の死亡により受給権が発生する遺族年金
空き家の相続放棄は誰に相談する?
空き家の相続放棄の相談先について、ご紹介します。
弁護士
弁護士は、相続に関して最も一般的な相談先。
特に、相続放棄の場面では、負債の調査や処理などについても相談が必要です。
まずは、弁護士に相談するのが最も得策と言えるでしょう。
司法書士
司法書士は、不動産登記の専門家。
成年後見制度に積極的に関わっている司法書士も多く、相続問題全般に知識がある場合が多いです。
相続不動産については、司法書士に相談してみると良いでしょう。
税理士
固定資産税や相続税などの負担から空き家の相続放棄を考えている場合は、税理士に相談するのが一般的です。
協力関係にある、弁護士などの専門家を紹介してもらえることもあります。
不動産会社
空き家の相続放棄については、実は土地に資産価値があったなど、相続放棄が最良の判断とは限りません。
相続放棄を決める前に、不動産会社に相談してみると良いでしょう。
売却や買取などを提案してもらえる場合もあります。
まとめ
空き家の相続放棄の期限は、相続の開始があったことを知った日から3ヶ月以内。
空き家の相続放棄は、家庭裁判所の確認、必要書類の準備と提出、裁判所からの照会書の送付、裁判所が相続放棄を受理する流れになります。
手続き時の書類の不備や被相続人の財産の処分などについては、十分注意しましょう。
空き家の相続放棄の相談先は、弁護士・司法書士・税理士など。
空き家問題は、今や全国的にクローズアップされています。
相続放棄を決める前に、放棄のリスクも検討し、不動産会社に相談してみることをおすすめします。