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空き家の行政代執行、解体費用が払えない場合どうなる?実際の解体費用は?

空き家を相続したがなかなか管理ができない・・・。

少子高齢化が進む日本において、こういった方が増加しています。

増加する空き家に対する法律として、2014年に空家等対策の推進に関する特別措置法(以下、空き家法)が制定されました。

空き家をきちんと管理しなければ「特定空き家」に指定され、最終的には行政代執行で強制的に解体されてしまいます。行政代執行でかかった費用は空き家の所有者が支払わなければならない為、空き家を所有している方は特定空き家に指定されないよう対処する必要があります。

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行政代執行とは、行政が空き家所有者の代わりに適正管理に向けて対処することです。近隣に迷惑をかけたり、再三にわたる改善要求に応じない場合に実行される権限で、対処に要した費用は空き家所有者が負担する必要があります。執行されるまでの流れや費用、また、そもそも行政代執行の対象はどのような空き家なのかを解説します。

そこで今回は、空き家を所有している方、今後空き家を所有する予定のある方に向けて、空き家の管理義務と行政代執行について分かりやすく解説します。

後半では、行政代執行にかかった費用を支払えない場合はどうなるのか?ということにも説明します。最後までぜひご覧ください。

この記事でわかること

  • 特定空き家と行政代執行とは
  • 行政代執行の空き家解体費用が払えない場合、財産が差し押さえられる
  • 行政代執行でかかった費用は自己破産しても残る
  • 実際にかかった解体費用の相場は1,040万円

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行政代執行とは

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行政代執行とは、行政が行う強制執行の一種です。

行政上の義務を持つ者がその義務を果たさない場合に、行政が代わりにその行為を執行します。行為にかかった費用は後日、義務者から徴収されます。

空き家における行政代執行

不動産においては、所有者が管理義務を果たしていない空き家に対して、行政代執行による取り壊しや修繕が行われる事例があります。

少子高齢化の日本では、年々管理が行き届かなくなった空き家が増えています。

空き家法では、自治体が空き家の所有者に対して、状況を改善するよう指導や勧告することができるようになりました。

それらの指導に従わない場合、過料などの罰則が下され、最終的には行政代執行により強制的に補修や解体をすることも可能です。

では、どういった空き家がその対象となるのでしょうか。

特定空き家

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空き家法による行政代執行の対象となるのは、「特定空き家」です。

国土交通省が示す基本指針では、「特定空き家」を以下のような状態にある空き家と定めています。

  1. 倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
    例:建物の老朽化・損壊など
  2. 著しく衛生上有害となるおそれのある状態
    例:ゴミの放置による悪臭、虫やネズミの発生など
  3. 適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態
    例:木や雑草が伸びたままになっている、ゴミが放置されているなど
  4. その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが 不適切である状態
    例:不良のたまり場になっている、不審者が出入りしているなど

つまり、衛生上、防災上、防犯上様々な理由で、近隣住民に被害をもたらす可能性のある空き家が「特定空き家」と言えます。

特定空き家は危険なだけではなく、周囲の土地の価値まで下げかねません。そういったことから、近所の方による苦情をもとに、特定空き家に指定されるというケースが多いようです。

行政代執行に至るまでの流れ

特定空き家の指定から行政代執行に至るまでには、段階に応じてプロセスがあります。

早めに対応しなければ様々な弊害が発生しますので、なるべく早い段階で対応するようにしましょう。

1.特定空き家の指定

近隣住民から市区町村に寄せられる苦情をもとに、役所の職員が空き家を現地調査します。現地を確認し、上記の条件に当てはまるような状況であれば、特定空き家に指定されます。

2.助言または指導

特定空き家に指定されたのち、まずは行政から所有者に対して助言や指導が行われます。この段階でしかるべき対応を取れば、何の罰則もなく特定空き家の指定は解除されます。

3.勧告

行政からの助言があったにも関わらず状況が変わらない場合、より効力の強い「勧告」に進むこととなります。

勧告された場合、その土地に対して「固定資産税の住宅用地特例」が除外されるというデメリットが発生します。

「固定資産税の住宅用地特例」とは、住宅の用途で利用されている土地に対して、固定資産税や都市計画税を減額する特例です。

その減額幅は土地の広さにより異なります。

土地の広さ 固定資産税 都市計画税
200平方メートル以下の部分 6分の1 3分の1
200平方メートル超の部分 3分の1 3分の2

土地の広さによって減額の割合は異なるものの、勧告されると、固定資産税が最大で6倍になる可能性があります。

その為、空き家所有者は、勧告に至る前に対応することが重要となります。

4.命令

勧告を受けた所有者が正当な理由なくその勧告で指示された措置を取らなかった場合、もう一段階強い「命令」が下されます。

自治体は猶予期間を定めて、改善内容について命令します。この命令に応じなかった場合、所有者は50万円以下の過料に処される可能性があります。

所有者はこの命令に不服がある場合は異議申し立てを行うことができますが、特定空き家に指定されるだけの理由があるということは客観的な証拠があるということであるため、異議申し立てが通る可能性は低いと言えるでしょう。

5.行政代執行

最終通告である命令にも従わず放置されたままの空き家については、ついに行政代執行が実行されます。

自治体は行政代執行を行うために、文書による戒告を行います。そこでは、改善義務を履行するまでの期限と、期限までに履行されない場合に代執行が行われる旨が記載されます。

期限が到来した後、自治体が選定した業者が空き家の取り壊しや修繕を行います。

行政代執行にかかる費用はいったん自治体が負担するものの、後日所有者に対して請求されます。

略式代執行とは?

空き家には、登記がされていないことで所有者不明となっているものが多くあります。こういった所有者不明の建物については、行政代執行ではなく、「略式代執行」の措置が取られます。

両者の違いはそのスピード感と費用請求の在り方です。

行政代執行の場合、所有者が確定しているため、その所有者に対して再三の改善要請が行われ、行政代執行については最終手段となります。また費用については、所有者から強制徴収されます。

略式代執行の場合、所有者が特定できていません。しかし安全上その他の理由により早く対応しなければならないという理由があるため、しかるべき告知のあと速やかに略式代執行が行われます。

かかった費用は市区町村で立て替え、所有者が分かれば所有者に対して請求します。しかし、所有者が不明のままであることも多く、回収できていないままということもあるようです。

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行政代執行の費用を支払えない場合はどうなる?

行政代執行の費用を支払えない場合はどうなる?

空き家の解体となった場合、費用は高額となります。もしその費用を支払うことができない場合はどうなるのでしょうか。

支払えない場合は財産の差し押さえ

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所有者が解体費用の支払いを拒否した場合や、全額支払うことができない場合は、所有者の財産の差し押さえが行われます。

差し押さえの対象となるのは、所有者が所有している現金や預貯金、株式、不動産、車、貴金属などのすべての財産です。

給与についても、生活に支障をきたさない範囲として手取りの4分の1までが差し押さえの対象となります(※手取り金額が44万円超の場合には33万円を引いた金額までが差し押さえの対象)。

所有者本人や家族の生活が出来る分は残るようになっていますが、差し押さえの対象は幅広く設定されています。

こういったことから、いずれかの方法で費用を負担しなければならないことは理解しておきましょう。

自己破産しても免れることができない

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行政代執行にかかった費用は、自己破産しても残ります。

行政代執行にかかる費用は、国税を滞納した際と同様に「強制徴収」が認められています。

これは行政が裁判所による審判なく債務者から徴収できるということであり、自己破産した場合でもその義務は残ります。

行政代執行における債務は支払いがされない限り消えることはないため、免れることができないことは重々理解しておきましょう。

解体費用はいくらかかる?

国土交通省が令和3年2月4日に発表した資料「空家等対策特別措置法について」では、行政代執行により解体に至った事例が2件紹介されています。

うち、千葉県柏市の延床面積約38.5㎡・鉄骨造3階建ての解体工事費用には約1,040万円。新潟県十日町市の延床面積約633.1㎡・木造及びRC造等との混構造、平屋及び2階建て3棟及び付属建物2棟の建築物除却費用にも、同じく約1,040万円発生したと紹介されています。

解体にかかる費用は建物の規模や業者にもよるものの、行政代執行の場合は所有者が業者を選定することができないため、費用が高くなる可能性があります。

そういったことから、行政代執行になってしまう前に、自ら解体業者を選定し対処することをおすすめします。
解体費用は高額になることがあるため、自治体の補助金制度を利用する、解体ローンを組むなどの対処法を検討しましょう。
また、空き家買取の専門業者に相談し古家付き土地として売却するのもおすすめです。「空き家パス」は他の不動産会社で買取を断られたような空き家でも買い取った実績があります。ぜひお気軽にご相談ください。

「空家等対策の推進に関する特別措置法」制定からこれまでの実績

「空家等対策の推進に関する特別措置法」制定からこれまでの実績

では、2014年に空き家法が施行されてから、実際にどういった動きがなされているのでしょうか。

行政代執行は年々増加している

国土交通省による2020年3月時点の発表によると、空き家法が施行されてからの5年間で、全国で約1.2万件の特定空家等の除却が進んでいるとのこと。

特定空き家に指定されたものに対する措置の内訳を確認すると、以下の通りとなっています。

  • 助言・指導:19,029件
  • 勧告:1,351件
  • 命令:150件
  • 行政代執行:69件
  • 略式代執行:191件

 

大半の所有者が、助言・指導の段階で適切な対応を取っている一方、代執行にまで至った件数も計260件あります。

空家法に基づく助言、指導などの措置を実施する市区町村は年々増えていっています。

これまで指摘を受けていなかったとしても、今後指摘を受ける可能性は十分にありえます。

参考: https://www.mlit.go.jp/report/press/house03_hh_000142.html

行政代執行の例

国土交通省のHPでは、行政代執行に至った事例が複数紹介されています。

ここでは2018年3月に国土交通省がまとめた事例から、3つご紹介します。

まずは行政代執行で外壁面の修繕を行った事例です。

行政代執行の例

続いては、行政代執行で越境立木の剪定と屋根ふき材の飛散防止措置を行った事例です。

 

行政代執行の例

 

最後に、行政代執行で管理不全状態建物の撤去を行った事例です。

この事例では、費用約410万円を財産の差し押さえで回収する予定と紹介されています。

 

行政代執行の例
参考: https://www.mlit.go.jp/common/001239420.pdf

特定空き家に指定されてしまったら?

特定空き家に指定されてしまったら?

 

では、万が一特定空き家に指定されてしまったらどうすればよいのでしょうか。

指摘を受けた該当箇所を改善する

特定空き家に指定される理由には、様々なものがあります。

中には建物自体が老朽化し取り壊さなければならないという例もありますが、建物の一部を修繕するだけで改善が認められる場合があります。

国土交通省が2021年6月30日に改正した「特定空家等に対する措置」に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン)では、特定空き家に指定される具体的な事例が紹介されると共に、助言や指導・勧告・命令に係る措置を実施すれば特定空き家ではなくなるという旨が記載されています。

例えば「屋根、外壁等が脱落、飛散等するおそれがある」という理由で指摘を受けた場合は、その箇所を修繕すれば特定空き家の指定を外すことが可能です。

また、「擁壁が老朽化し危険となるおそれがある」という理由で指摘を受けた場合は、その擁壁を撤去するか、補強することで指定を外すことが可能です。

他にも、樹木や建築物が他の敷地に越境していることで特定空き家に指定される例があります。

こういった場合も、樹木の伐採や越境物の撤去をすることで解除することが可能です。

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まとめ

まとめ

いかがでしたでしょうか。

今回は、空き家にかかる行政代執行についてご説明しました。

空き家であっても、きちんと管理できているならば問題ありません。

しかし、建物は年月とともに老朽化していきます。いつまでも自らの力だけで管理できるわけではないため、今後活用する予定がない空き家であれば、老朽化が進む前に売却したほうがよいでしょう。

今回ご紹介した通り、空き家の管理は所有者に課せられた義務です。

その義務を怠ると固定資産税の減税特例がなくなるだけでなく、50万円以下の過料に処せられ、挙句の果てには行政代執行にかかる費用を支払うために様々な財産を差し押さえられてしまいます。

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