借地権は買取してもらえる?売却先ごとに売却方法や注意点を解説!
借地権者の方の中には、借地権の売却を検討している方もいらっしゃるのではないでしょうか?その中には、そもそも借地権の買取はしてもらえるのかという疑問をお持ちの方も多いことでしょう。結論、借地権は買取してもらえます。
しかし、いろいろと注意しなければいけない点も多いので、この記事では借地権の売却について詳しく解説していきます。
- 借地権はどこに買取してもらえるか
- 借地権を売却するための具体的な方法
- 借地権売却の際の注意点
目次
「借地権」とは建物の所有を目的に他者の土地を借りる権利のこと
まずは「借地権」について改めて解説していきます。借地権者の方はぜひ再確認してみましょう。
借地借家法第2条では、「借地権」について以下のように定義しています。
(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 借地権 建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権をいう。
引用: 借地借家法 | e-Gov法令検索
ここにある通り、「借地権」とは建物の所有を目的として他者から土地を借りる権利のことを指します。つまり、借地権を売却する際には、借地上にある既存の建物を取り壊して新たな借地権者が自分名義の建物を建てられる状況にしてから売却するか、あるいは既存の建物ごと売却しなければいけません。このことはしっかりと理解しておく必要があるでしょう。
借地権には旧法のものと新法のものがある
また、借地権には大きく分けて旧法借地権と新法借地権があり、それぞれ契約期間に違いがあります。まずは旧法借地権について見ていきましょう。
契約期間 | 更新後の存続期間 | |
---|---|---|
堅固建物 | 期間の定め有:30年~ 期間の定め無:60年 |
期間の定め有:30年~ 期間の定め無:30年 |
非堅固建物 | 期間の定め有:20年~ 期間の定め無:30年 |
期間の定め有:20年~ 期間の定め無:20年 |
旧法借地権では、堅固建物・非堅固建物によって契約期間に違いがあります。堅固建物の契約期間は30年以上、非堅固建物の契約期間は20年以上です。ただし、期間の定めがない場合などの契約期間は、堅固建物だと60年、非堅固建物だと30年になります。また、更新後の存続期間は堅固建物だと30年、非堅固建物だと20年です。ただし、当事者同士の合意があればそれ以上の期間を設定することもできます。
続いて新法借地権になりますが、新法借地権には旧法借地権の性質を引き継いだ「普通借地権」と、契約の更新ができない「定期借地権」の大きく2種類があります。まずは、普通借地権の契約期間について見ていきましょう。
契約期間 | 更新後の存続期間(1回目) | 更新後の存続期間(2回目~) |
---|---|---|
期間の定め有:30年~ 期間の定め無:30年 |
期間の定め有:20年~ 期間の定め無:20年 |
期間の定め有:10年~ 期間の定め無:10年 |
この表の通り、普通借地権には堅固建物・非堅固建物の区別がなく、契約期間は一律で30年(当事者間の合意がある場合はそれ以上も可能)となっています。また、更新後の存続期間については、1回目とそれ以降の更新によって異なるのが特徴です。1回目の更新後の存続期間は20年、それ以降の場合は10年となっており、どちらも当事者間の合意があればそれ以上の期間も設定できます。
次に、定期借地権について見ていきましょう。
定期借地権の種類 | 契約期間 |
---|---|
一般定期借地権 | 50年~ |
建物譲渡特約付借地権 | 30年~ |
事業用定期借地権 | 10年~50年 |
定期借地権は、さらに細かく3種類に分けることができます。
「一般定期借地権」は、50年以上の契約期間で土地を利用できる借地権です。次に「建物譲渡特約付借地権」は、30年以上の契約期間終了時に建物を地主に買い取ってもらうことができます。そして「事業用定期借地権」は、その名の通り事業用の建物を所有するための借地権で、契約期間は10年以上50年未満となっています。
原則、これらすべての定期借地権は契約の更新ができませんが、事業用定期借地権で契約期間が30年以上のものに関しては、当事者間の合意によって任意で契約更新や建物買取請求権を設定することも可能です。
借地権はどこに買取してもらえる?
それでは、借地権は一体どこに買取をしてもらえるのでしょうか?
考えられる売却先として、以下の3つが挙げられます。
- 地主
- 第三者
- 不動産業者
借地権を地主に買い取ってもらう
まずは地主に買い取ってもらうことが考えられますが、実際にはこのケースは多くありません。ただし、前述した建物譲渡特約付借地権や、建物買取請求権が設定された事業用定期借地権の場合は、契約期間終了時などに地主に買い取ってもらうというケースもあります。
借地権を第三者に買い取ってもらう
続いて、第三者に買い取ってもらうケースについてです。借地権を第三者に売却・譲渡する場合には、地主の承諾や譲渡承諾料(名義変更料)が必要になります。そのため、このケースも実際には多いわけではありません。第三者に借地権を譲渡したい場合には、地主としっかり話し合う必要があります。
借地権を不動産会社に買い取ってもらう
最後に、一番現実的でおすすめなのが不動産業者に買い取ってもらうことです。借地権の売却は、通常の土地の売却に比べて難しいため、プロに任せるのがいいでしょう。
借地権の買取をしてもらうための具体的な方法
さて、それでは実際に借地権を買い取ってもらうための具体的な方法はどのようなものになるのでしょうか?前述した3つの売却先ごとに解説していきます。
1.地主に買い取ってもらう場合
前述した通り、地主に借地権を買い取ってもらえるケースは多くありません。その理由は、地主にとってメリットが少ないためです。長年土地を貸し出していた地主にとっては、その土地を利用する目的がなく持て余してしまう可能性が高く、それよりも土地を貸し出すことで地代(借地料)を得続ける方が経済的なメリットが多いのです。
つまり、地主に借地権の買取を打診する場合には、地主にとってメリットがあるかどうかを考える必要があります。もしメリットがありそうな場合には、そのことを明確にした上で交渉すれば、買い取ってもらえる可能性は高くなるでしょう。
2.第三者に買い取ってもらう場合
前述の通り、第三者に借地権を譲渡する場合には、地主の承諾を得たうえで譲渡承諾料(名義変更料)を支払う必要があります。そのため、地主と慎重に交渉していくことが重要です。万が一、地主の承諾を得ずに勝手に第三者に借地権を譲渡してしまうとトラブルの元になってしまいます。日頃からの関係性などを考慮し、場合によっては専門家に相談しながら丁寧に話し合いを重ねていきましょう。
3.不動産業者に買い取ってもらう場合
借地権を売却する場合は、不動産業者に買い取ってもらうのがおすすめです。借地権の売却は通常の土地の売却と異なり、権利関係などの交渉や調整などが難しいため個人ではなかなかスムーズに進められません。一方、不動産業者はプロとして長年の経験や交渉力を持っているため、スムーズに売却をおこなうことができるでしょう。そのため、借地権の売却は不動産業者に相談してみることをおすすめします。
借地権の買取をしてもらう際の注意点
また、借地権を買取してもらう際には注意すべき点も多くあります。こちらに関しても詳しく解説していきましょう。
地主の許可がないと借地権の売買はできない
前述の通り、借地権の売買をおこなう際には地主の許可が必要になります。ただし、借地権には「地上権」と「賃借権」の2種類があり、許可が必要なのは賃借権の場合のみになります。地上権の場合には、地主の許可なく自由に借地権の売買が可能です。
借地人から打診した場合は更地価格の50%ほどの価格になってしまう
借主、すなわち借地人(借地権者)から地主に対して借地権の売却を打診する場合には、更地価格の50%ほどの価格になってしまうことが多いということにも注意しましょう。前述の通り、地主にとって借地権を買い取るメリットはほとんどありません。そのため、安価でしか売れないことが多いのが現実です。
借地権と建物の登記名義が異なったままだとトラブルになることもある
また、借地権のみを第三者に売却して建物の名義は自分のままにしている(=借地権と建物の名義が異なっている)と、新たな借地権者が地主に対して権利を主張できないことがあるため注意が必要です。借地上の建物を取り壊してから借地権の売却をおこなう場合には問題ありませんが、建物ごと売却する場合はしっかりと建物の名義変更もおこなったうえで売却する必要があります。
まとめ
ここまで解説してきた通り、借地権の売却は通常の土地の売却に比べて難しく注意点も多いです。そのため、実績の多い不動産業者に依頼することをおすすめします。空き家パスは借地権付き建物の買取実績も多いので、売却を検討中の方はぜひお気軽にご相談ください。