私道持分とは?メリット・デメリットと想定されるトラブル、固定資産税について解説

建物が接している道路には、「公道」と「私道」があることをご存じでしょうか。私道部分の一部の所有権を有することを私道持分といいます。
本記事では、私道持分とは何かという概要を中心に、私道持分のメリットやデメリットなどについて触れています。よくあるトラブルについても解説していますので、私道に接する不動産の購入や売却を検討している方はぜひ参考にしてください。
- 私道持分とは
- 私道持分の種類
- 私道持分を持つメリットとデメリット
- 私道持分でよくあるトラブル
目次
「私道持分」とは?

そもそも「私道持分」とは一体何なのでしょうか。
まず、私道持分を解説する前に「私道」とは何なのかを見ていきましょう。
そもそも「私道」とは?「公道」との違いについても解説
国や各自治体が所有している道路が「公道」と呼ばれるのに対し、それ以外の個人や企業・団体などが所有している道路を「私道」と呼びます。
基本的に、公道は国や自治体が維持・管理を行いますが、私道は私道の所有者が維持・管理を行わなければなりません。
そもそも、建物を建てるためには基本的に建築基準法の第42条で定められた道路に接している必要があります(接道義務)。
その建築基準法上の道路は、42条1項1号道路(幅員4m以上の道路法による道路で国道・県道・市道などを指す)や42条1項2号道路(開発道路)、42条1項5号道路(位置指定道路)など、その他にも種類はさまざまです。
上記の42条1項1号道路以外の道路の場合、公道と私道いずれの可能性もあるため、不動産の購入を検討する場合は、その敷地が公道と私道のどちらに接しているのかを調べる必要があります。
複数人で不動産を共有する際の「持分」とは?
不動産の持分とは、1つの不動産を複数人で共有する場合、各共有者が有する所有権の割合のことです。
例えば、夫婦で不動産を購入する場合に、それぞれが住宅ローンを組んで購入するなど2人で住宅購入資金を負担するケースがあります。その場合、不動産購入の負担割合に応じて所有権を有し、2人で共有することになります。5,000万円の不動産を、それぞれが2,500万円ずつ負担して購入した場合、夫の持分は2分の1、妻の持分も2分の1です。
「私道持分」とは、私道に接する土地の所有者が持つ私道の持分
私道は、基本的に、私道所有者または私道所有者が通行を認めた者だけが利用できます。
私道持分とは、1つの私道に複数の敷地が接している場合に、その私道に接しているすべての敷地の所有者がその私道を利用できるように分配された所有権のことです。
私道持分には2つのパターンがあります。それぞれのパターンについては、以下で見ていきましょう。
私道持分には「共同所有型」と「相互持合型」がある
私道持分には、①民法で定められている共有(共同所有) の規定が適用されるものと、②登記上で複数に分筆された私道をそれぞれ所有し相互に利用させ合うものとがあります。
上記の①を「共同所有型」、②を「相互持合型」といいます。
共同所有型:1つの私道を均等な持分割合で共有する
共同所有型の私道持分とは、1つの私道全体に接している敷地の所有者全員で、同じ持分で私道を共有する状態を指します。
つまり、1つの私道が共有名義になっている状態です。

相互持合型:分割された特定の区画をそれぞれが単独所有する
相互持合型の私道持分とは、私道全体を複数に分筆して、分筆されたそれぞれの私道の所有権をその私道に接している敷地の所有者たちで所有している状態を指します。
つまり、1つの私道が登記上で分筆されており、分筆された各筆を所有している状態です。あくまで、共有ではなく、各筆を合わせて1つの私道が成り立っている状態です。公道に出るために、他の使用者が自分の土地を通行することになるため、使用にあたっては「通行地役権」を設定することになります。
関連記事:私道の通行権とは?通行権の種類やよくあるトラブルについても解説

私道持分を持つ場合のメリットとデメリット
売買を検討している不動産が私道に接していて、不動産購入後に私道持分を持つ場合、メリットとデメリットがあることも踏まえて不動産の購入を考えなければなりません。
メリット:接する私道の通行・建て替え・売却が可能
私道持分を持つ大きなメリットは、道路使用の権利を持てることにあります。私道の所有権があることで、道路使用の権利を主張する根拠になるため、通行だけでなく、建て替えや売却など自由に土地を活用することが可能になります。
なお、指導持分がないからといって再建築ができないわけではありません。
デメリット:接する私道の修繕費用や固定資産税を負担する必要がある
私道持分を持つ大きなデメリットとしては、私道の整備に対する修繕費用の負担や、固定資産税を負担する必要がある、などが挙げられます。
公道であれば、道路の維持管理について、国が所有している道路なら国が行い、市が所有している道路なら市が行います。
ところが、私道の場合は、道路の亀裂や陥没などが発生した場合、自治体は関与しないため、私道所有者が共同で費用を負担しなければなりません。また、私道に対しても、毎年、土地と建物以外に私道部分の固定資産税を支払う必要があります。
私道の固定資産税はいくら?非課税になる条件も解説
私道持分を持つ場合、その私道部分にも毎年固定資産税が課税されます。見落としがちなコスト項目ですが、私道の面積や路線価によっては意外と負担になるケースもあるため、事前に把握しておくことが重要です。
私道の固定資産税額の目安
私道の固定資産税は「固定資産税評価額 × 税率(1.4%)」で計算されます。私道の固定資産税評価額は周辺の宅地評価額をもとに算定されますが、一般的に通常の宅地より低く評価されることが多いです。
たとえば、固定資産税評価額が100万円の私道を2分の1の持分で所有している場合、課税対象は50万円分となり、年間の固定資産税は7,000円(50万円 × 1.4%)程度になります。
「公衆用道路」として認定されれば非課税になる
私道であっても、不特定多数の人が日常的に利用できる「公衆用道路」として各市区町村に認定されると、固定資産税が非課税になります。
認定を受けるためには、一般的に以下の条件を満たす必要があります。
- 公道と接続しており、不特定多数が自由に通行できる状態であること
- 通行を制限するフェンスや門扉などが設置されていないこと
- 私道部分が分筆され、地目が「公衆用道路」として登記されていること
なお、固定資産税の扱いは自治体によって異なる場合があるため、詳しくは管轄の市区町村に確認することをおすすめします。
私道持分がない場合に想定されるトラブル
前述の通り、私道持分を持つ場合はコスト面でのデメリットがあるため、「私道持分はなくてもいいのではないか」と考えてしまう人もいらっしゃることでしょう。
しかし、私道の共有持分がないと多くのトラブルが想定されるため、私道持分はあった方がいいと考えるのが一般的です。なお、該当する物件の私道持分の有無は公図や登記簿で確認できます。
ここでは、私道持分がない場合に想定されるトラブルについて解説していきます。
通行料がかかったり、そもそも私道の通行承諾が得られなかったりする
基本的に私道は、私道所有者のみが通行できるものであるため、私道持分がない場合は私道所有者に対し通行の承諾を得なければなりません。
その際、私道の通行料がかかる場合があります。通行料に関する規定は民法に定められていませんが、近隣の通行権の使用料や土地勘定金額、近隣の駐車場使用料などを参考に決められるのが一般的です。
関連記事:囲繞地(いにょうち)通行権とは?
または、そもそも私道所有者からの通行承諾が得られないことも考えられ、その場合、出入りができなくなるリスクがあります。
掘削工事ができず水道やガスの配管が通せない
私道の場合、通行だけでなく水道やガスなどのインフラ工事を行うための道路掘削承諾書を私道所有者から取得する必要があります。
私道持分がない場合、その道路掘削の許可を得られなければ、私道を掘削する権利がないため、インフラ設備の配管工事を行うことはできません。例えば、古くなって漏水した水道管の補修工事を行いたくても、私道所有者からの承諾を得られず工事ができないといったトラブルにつながる可能性があります。
なお、2023年4月に改正民法が施行され、他人が所有するライフラインの設備を使用する権利(設備使用権)が明確化されました。これにより、あらかじめ私道所有者に通知をした上で、必要な範囲内で私道を使用することが可能になりました。
ただし、相手に償金を支払わなければならない可能性や、自力救済が禁止されているなど、個人が判断して行うにはハードルが高いのが事実です。
私道に接する不動産の売買にお悩みの際は、弁護士などの専門家や、そのような不動産の売買を得意としている不動産会社への相談をおすすめします。
住宅ローンが組めないこともある
私道の持分がない場合、通行や道路掘削などを自由に行うことができないため、私道持分のある場合と比べて、不動産としての価値が下がるケースがあります。
不動産の価値が下がるということは、金融機関からの住宅ローンを借り入れる際の不動産の担保としての価値が下がることになるため、結果として住宅ローンを組めない場合もあります。
私道持分がない場合の対処法
私道持分がないことでさまざまなトラブルが想定されますが、状況に応じた対処法があります。問題が深刻化する前に、以下の方法を検討しておきましょう。
通行地役権を設定する
私道持分がない場合でも、私道所有者との合意により「通行地役権」を設定することで、継続的な通行権を確保できます。通行地役権は登記することで、将来私道の所有者が変わっても効力が維持される点がメリットです。掘削については別途「掘削承諾書」の取得が必要になります。
私道持分を取得する
根本的な解決策は、私道所有者から持分の一部を購入または贈与を受けて取得する方法です。持分を取得することで、通行・掘削・建て替えなどを自由に行えるようになり、不動産としての価値も回復します。取得には私道所有者全員の合意が必要になる場合があるため、早めに交渉を進めることが大切です。
私道持分なしのまま売却する場合
私道持分がない状態でも売却は可能ですが、買主にとってリスクのある物件として扱われるため、通常より売却価格が下がる可能性があります。売却時には通行承諾書の有無・通行料の有無を明確にし、買主に丁寧に説明することが重要です。
訳あり不動産の買取を専門とする業者であれば、私道持分なしの物件でも適正価格での買取が可能です。まずは査定を依頼して状況を確認してみましょう。
私道持分に接する土地を売却する前に確認すること
私道に接する土地を売却する際は、権利関係を明確にしておくことが重要です。買主にとって、通行や工事ができるかどうかは購入後の土地利用に直結するため、あいまいなまま売りに出しても買い控えられてしまいます。売却前に以下の3点を確認しておきましょう。
通行承諾書を取得しておく
私道の通行承諾を得ているかを確認し、可能であれば書面(通行承諾書)を取得しておきましょう。通行承諾書とは、人や車両が無償で通行・使用する権利を私道の所有者が認めた書面です。売主が得た承諾は買主にも引き継がれるため、売却前に取得しておくことで買主が安心して購入できます。口約束ではなく、私道共有者に署名・捺印をもらった書面で残すことが重要です。
掘削承諾書を取得しておく
上下水道管・ガス管の埋設や引き込み工事を行うための掘削承諾書も、通行承諾書と同様に確認・取得しておきましょう。買主が新築・建て替えを行う際にインフラ工事が必要になっても、掘削承諾がなければ工事業者が引き受けてくれないことがあります。売却前に共有者全員からの承諾書を取得しておくことが理想です。
持分割合を明確にしておく
私道の維持・管理費用は、原則として私道の持分割合に応じて共有者全員で負担します。持分割合が不明確なまま売却すると、買主と私道共有者との間で補修費用の負担をめぐるトラブルになる可能性があります。登記情報(全部事項証明書)で持分割合を確認し、買主に正確に伝えておきましょう。もし持分がない場合は、通行地役権の設定を私道所有者に交渉する方法もあります。
まとめ
ここまで解説してきた通り、私道に接する土地は、私道持分の有無に関わらず面倒なことが多いものです。そこで、私道に接する土地の管理に困った際には、その売却を検討してみることをおすすめします。
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