擁壁がある土地は売れない?売れにくい理由と売却方法を解説
土地上に擁壁がある不動産を購入し長年住んだ後に売却する場合には擁壁が現行法令に適していないケースがあり、解体し建て替えする際には注意が必要です。
また安全性が確保できていない擁壁を含んでいる場合は補強工事が必要となり、売主と買主のどちらかが擁壁工事に関わる費用を負担することになります。
そのため擁壁がある家の不動産売却は一般的な売却よりも難しくなることから、売却するためのポイントを知っておく必要があります。
この記事では擁壁がある家が売れにくい理由と売却方法について解説しますので、擁壁がある物件を所有している人は参考にしてください。
- 擁壁の役割と種類
- 擁壁がある土地が売れにくい理由は法的制約や安全性のリスク、維持管理の手間やコストがあるから
- 擁壁がある土地を売却する方法5選
目次
擁壁とは?
擁壁がある土地を売るためには、そもそも擁壁がどういった構造物であるのかを知っておく必要があります。
擁壁は無意味に建築されているわけではなく役割があるため、解体する場合にも注意が必要です。
この章では擁壁について詳しく解説します。
擁壁は高低差のある土地に組まれる壁状の構造物のこと
山を切り開いて造成した住宅街などは道路と敷地、敷地と隣地部分に高低差が発生してしまい、そのまま建物を建築してしまうと土砂が流入してしまう可能性があります。
そのような状態になってしまうと家が倒壊してしまう危険があることから、傾斜地に隣接する土地は擁壁工事によって安全性を確保されています。
つまり、擁壁は高低差のある土地に家を建てられるようにし、さらに敷地外の斜面が崩落することを防ぐ役割がある構造物です。
しかし、擁壁は経年劣化とともにひび割れ等が発生し建築確認を取得した擁壁であっても年月の経過とともに安全性が確保できなくなります。
そして最終的には「がけ」という扱いになり、2m以上の高さがある擁壁に隣接する土地は再建築が非常に難しくなってしまいます。
この場合、擁壁の補修か再建築、もしくは「がけ」から4m以上離した場所に家を建築することが建築基準法で定められていますが、補修された擁壁で再び建築確認の申請許可を得ることは非常に難しく擁壁の再建築は数百万〜数千万円かかるため、現実的ではありません。
さらに4m以上離して建築する場合は大きな敷地ではなければ実現できません。
こうした要因によって、擁壁(がけ)がある土地は売りにくく販売が長期化する傾向にあります。
擁壁の種類
擁壁は大きく分けて「コンクリート」と「自然石」があり、一般的に造成地や現存する擁壁を解体し再度設置した擁壁はコンクリートです。
傾斜部分に擁壁となる型を作り、鉄筋を設置した上でコンクリートを流し込み成形するこの方法は強度が高く、建築申請も通過しやすいというメリットがあります。
また、エリアによっては一定規模以上の造成をする際には市区町村の定めた方法で造成することが宅地造成規制法によって定められており、コンクリート擁壁であれば宅地造成工事の基準もクリアしやすくなります。
そのため、新しく擁壁を設置する場合の多くがコンクリート擁壁となります。
その一方で自然石を組み合わせる擁壁もあり、「間知石」と呼ばれています。
この擁壁は建築されてから数百年以上も現存している城や蔵で使われており、コストもコンクリート擁壁に比べて安いことから建築基準法の施行前にはよく使用されていました。
しかし現在ではこの擁壁は安全性が認められるケースが少なく、建築士などの専門家が点検をした際に崩落のリスクありと判定され許可がでないことも少なくありません。
これにより再建築された擁壁が隣地に設置されていたとしても擁壁の種類によっては建築会社が建築不可とするケースもあるため、注意が必要です。
擁壁がある土地が売れにくい理由
擁壁がある土地は他の土地よりも住宅が建築しにくく、その結果売れ残ってしまうことが多いです。
理由として次のようなことが挙げられます。
- 擁壁に関する法律と制約が多い
- 安全性に関するリスクがある
- 維持管理するために手間やコストがかかる
擁壁がある土地が建築しにくい理由について、以下で詳しく解説します。
擁壁に関する法律と制約が多い
建築基準法や都市契約法、宅地造成等規制法といった擁壁に関する法律など擁壁の種別や工事の制約が多く、その結果擁壁の再設定が難しくなってしまいます。
また、擁壁は売買しようとしている土地だけでなく隣地にも大きな影響を与えることから、トラブルを避けるためにも査定を断る不動産会社もいます。
このように、たとえ人気エリアだったとしても擁壁があるせいで売却自体が難しくなり、たとえ売却をスタートできたとしても買い手がつかず、その結果売却価格が相場よりも低くなってしまうことも少なくありません。
安全性に関するリスクがある
擁壁は土砂の流出や地盤の崩壊を防ぐ役割を担っていますが、経年劣化によって耐久性が下がると土圧に耐えきれず擁壁自体が崩壊してしまうことも考えられます。
実際に古い擁壁が崩壊し隣地に損害が発生したというケースもあり、大きな問題となっています。
こうしたリスクを抱えた上で購入することになるため、物件情報に「がけ条令」という記載があるだけで検討を見送る買主も多いです。
維持管理するために手間やコストがかかる
擁壁の種類に関わらず、擁壁は定期的にチェックし補修しなければ耐久性を維持することはできません。
そのため擁壁部分はひび割れや欠け、水のシミなどがないかチェックし修繕する必要があります。
万が一崩壊の危険性が高いと判断された場合は造り変えることになり、その場合は数百万単位の費用がかかってしまいます。
このように、擁壁がある土地はメンテナンス工数と費用がかかるというデメリットがあります。
擁壁付き土地を売る方法は?
擁壁がある土地はリスクが高いことから売りにくく、たとえ買主が買いたいと思っても建築会社からストップが入ることもあります。
このことからも擁壁付き土地は一般的な土地よりも売るために次のような工夫が必要です。
- 擁壁のメンテナンスや専門家による検査を行う
- 補強工事を行う
- 擁壁の建て替え工事を行う
- 更地にして土地を売る
- そのまま空き家買取業者に売却する
擁壁がある土地を売る方法について以下で詳しく解説します。
擁壁のメンテナンスや専門家による検査を行う
擁壁は定期的にメンテナンスすることで耐久性の維持が可能であることから、劣化を食い止めるという意味でも専門家に検査を依頼すべきです。
また擁壁の状況を把握し買主に伝えることは買主の購入意欲を高めることにも繋がり、その結果早期売却できる可能性を高めることになります。
また居住中の戸建てを「古家付き土地」として売却している場合は売主が住んでいる環境の安全性をチェックすることにもなるため、専門家による検査はおすすめです。
補強工事を行う
擁壁をチェックし耐久性に問題があると判明した場合は、速やかに補強工事を施工することがポイントです。
なぜなら少しでも倒壊のリスクがある擁壁は敷地内だけでなく隣地に対しても危険な状態となり、万が一倒壊してしまうと隣地から損害賠償請求を受けることもあり得るからです。
そのような状況になってしまうと買い手を見つけることはさらに難しくなってしまい、売却するのに何年もかかる可能性もあります。
このようなトラブルを避けるためにも、擁壁をチェックし問題があると判明した場合は補強工事を実施すべきです。
擁壁の建て替え工事を行う
経年劣化が激しい擁壁は補強工事だけでは安全性を確保できない状態になっていることが多く、台風や洪水といった自然災害で倒壊するリスクがあります。
そこで擁壁を建て替えし、建築確認を再度取得した状態で売却する方法もあります。
この方法によって買主は擁壁が持つリスクを解消した上で購入できることから、買い手が見つかりやすくなります。
ただし、この方法は売主の費用負担が大きくなる上に擁壁工事費用を自己負担で対応することになるため、売却計画の手残り額を再検討する必要があります。
場合によっては擁壁工事の負担分を上乗せした売却価格に再設定することもあり、相場を変えた価格になった場合は反響数が減ってしまうという問題もあります。
これにより販売がさらに長期化する可能性もあるため、擁壁の建て替え工事は慎重に判断すべきです。
更地にして土地を売る
経年劣化が進んだ擁壁はいつ倒壊してもおかしくないため、安全面からも解体撤去し更地にするのもおすすめです。
こうすることで買主が擁壁を撤去する費用を負担することもなく、売主としても倒壊による問題を解消することができます。
また、解体時に敷地外へ土砂が流出しないよう土を固め整地することで見た目の良い土地となり、買い手が見つかりやすくなるというメリットもあります。
そのため擁壁付き土地として販売したものの反響が増えずに悩んでいる場合は、擁壁を解体することを検討すべきです。
そのまま空き家買取業者に売却する
擁壁付き土地に古家がある場合は、空き家パスなどの不動産買取専門業社にお問い合わせください。
買取は仲介と違い買取業者が買主となるため、買取額に合意した時点で契約締結に進むことができます。
また、空き家パスは古い擁壁があっても買取することができ、さらに仲介手数料もかからないことからスピーディーに土地を売却したい売主に支持されている業者です。
このように、擁壁があることで中々売れない土地を所有している場合は不動産買取専門業社への依頼がおすすめです。
まとめ
擁壁は高低差や傾斜のある土地に家を建てる際に建築する建造物で、市区町村が法令に基づいた許可をだすことで設置されています。
しかし擁壁に関連する法案は年々改定されており、現存している擁壁が現行法令に適していないことも多いです。
この場合売却しようとしても買主の費用負担やリスクが高くなることから反響数が減り、その結果販売が長期化することも少なくなりません。
そこで擁壁付き土地を売るためのポイントを売却前に押さえておき、なるべくスムーズに売却するための準備が重要となります。
なお、擁壁がある土地上に古家がある場合はスピーディーかつ確実に売却できる「買取」がおすすめです。
買取は不動産買取を専門とする不動産会社が買取査定し、買主となって売買契約を締結する売却方法です。
この方法であれば擁壁がある土地であっても確実に売却することができ、さらに仲介手数料がかからないというメリットもあります。
そのため、擁壁付き土地の売却で困っている売主は空き家パスまでお問い合わせください。