土地の名義変更とは?必要な書類・費用・期間や流れ、不要な土地の手放し方まで解説
実家を相続や贈与によって所有権を得たり不動産を購入した場合、土地や建物に対して名義変更の登記をする必要があります。
こうした登記は法務局に申請することになりますが、一般的には自分で登記申請するのではなく司法書士に依頼する必要があり、所有者は必要書類を準備しておくことが重要なポイントとなります。
万が一権利証などの書類が紛失していたり法定相続人が署名押印した遺産分割協議書がないと登記ができず、不動産の決済が実行できなくなってしまいます。
また名義変更は必ず1人で申請するのではなく、相続の内容によっては複数人が同時に申請することになり予定を合わせる工数が発生してしまいます。
このような失敗を避けるためにも、名義変更の手続きについて流れや準備物を把握しておきましょう。
この記事では土地の名義変更に必要な費用や期間、書類、流れ、不要な土地の手放し方について解説します。
- 土地名義変更の概要
- 土地名義変更が必要な理由
- 土地名義変更の流れと必要書類
- 土地名義変更の注意点
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目次
土地名義変更とは
名義変更とは所有権移転登記のことで法務局へ必要書類と合わせて登記申請書を提出し土地の所有者を変更する作業となっており、不動産の売買だけでなく相続や贈与、離婚による財産分与といったケースでも所有権を主張するために必要です。
所有権だけでなく現在所有している名義人の住所や氏名が変更になった際にも登記を変更することもありますが、所有権の変更を「名義変更」とするのが一般的です。
なお、所有権移転に至った原因によっては登記のタイミングが異なることから、正しい流れを知っておくことが重要です。
土地名義変更が必要な理由
土地の売買や贈与を受ける場合、厳密にいえば名義変更をしなくても所有権を取得することはできます。
また前述したように名義変更することで税金が発生してしまうことから当事者同士の約束事として所有権を移転し、名義変更しない人も中にはいるでしょう。
しかし名義変更をしなければ後々大きな問題に発展する可能性が高く、場合によっては所有権を第三者に奪われてしまうこともあり得るため名義変更は必ず実施することをおすすめします。
この章では土地の名義変更が必要な理由について解説しますので、チェックしてみてください。
2024年から相続登記が義務化された
2024年(令和6年)4月1日より不動産の所有者が死亡し相続が発生した場合、相続開始を知った日から3年以内に相続登記の申請を完了させることが義務付けられました。
この制度は過去の相続にも遡及され、2027年(令和9年)3月31日までに過去発生した相続について登記しなければなりません。
万が一そのまま放置した場合は10万円以下の過料を科せられることになるため、土地を相続した場合はなるべく早めに登記することをおすすめします。
ただし遺産分割協議が長期化し、期間内に相続登記できない場合は法務局に相談することで期間を延長することも可能です。間に合わないことが判明した時点で法務局に相談してみましょう。
なお、共有名義にする場合は相続人全員で申請することになるため、あらかじめ日程を調整しておくことがポイントです。
【参考サイト:東京法務局】
関連記事:相続登記にかかる費用は?専門家に依頼・自分でやる場合2024年からの義務化について解説
土地の売却や贈与・賃貸のために必要
不動産は法務局に備え付けられた登記簿で所有者が管理されているため、所有者が変わった場合は登記簿の内容を変更する必要があります。
登記しなければ土地の相続人や財産分与を受けた人は所有権を主張することができず、不動産売却や子どもへの生前贈与ができなくなってしまいます。
不動産会社が土地を査定する際にも全部事項証明書などで所有者を確認することになりますが、査定の依頼者と登記されている名義人の名前が違えば関係性をチェックされ、場合によっては査定を断られることもあり得ます。
このようなトラブルを避けるためにも、名義変更の登記は必ず実施すべきといえるでしょう。
ローンの借り入れに必要
土地を購入する際に住宅ローンを組んで資金を調達する場合、融資を受けるためには土地の名義変更が条件となります。
金融機関は債務者に融資を実行する代わりに購入する土地に抵当権を設定し、万が一返済困難になった場合は差し押さえできるよう担保にします。
つまり土地の名義変更がされなければ土地の名義人と債務者、土地の所有者が全て結びつかないことになるため、融資を受けることはできなくなってしまいます。
これは買主が名義変更するだけでなく現在の所有者と全部事項証明書の名義人が同一であることも条件に入りますので、売主と買主のどちらであっても正しい名義人に変更しておく必要があります。
時間が経つと名義変更が難しくなる場合がある
たとえば遺言書に従って遺産分割を行ったものの名義変更しなかった場合、真なる所有者が死亡してしまうと子どもや孫が所有権を相続することになります。
このような状況になってから名義変更をしようとしても相続人全員の合意が得られにくくなってしまい、戸籍謄本を取り寄せるなど余計な費用と時間がかかってしまいます。
さらに所有者が海外にいたり音信不通になると名義変更に数年かかるケースもあり、司法書士への依頼料が高額になってしまうことも少なくありません。
こうしたリスクは相続発生後すみやかに名義変更することで回避できますので、後回しにせずに登記に必要な準備を進めることが大切です。
土地名義変更の流れ
この章では土地を相続し名義変更をするための流れを紹介します。
登記自体は司法書士に一任するケースが多いですが、名義人を決めるなどやっておくことはあります。
スムーズに名義変更するためにもステップを覚えておきましょう。
1. 名義人を決定する
土地を相続する場合、法定相続人で協議して名義人を決める必要がありますが、単名で相続する場合だけでなく複数の法定相続人と共有名義になることもあります。
たとえば評価額1,000万円の土地と現金500万円を所有している夫が死亡し妻と子供2人が法定相続人となった場合、妻は750万円を相続し子供は1人あたり375万円相続することになります。
この場合土地を誰が相続しても法定相続割合を超えるため、妻と子供2人で共有名義にするケースが一般的です。
このように法定相続割合に沿った形式で遺産分割を行い、土地の名義人を決定します。
2. 相続登記を行う
相続登記は「必要書類の作成」「登記申請書の作成」「不動産の所在地を管轄する法務局にて登記申請」「登記識別情報通知を法務局が受領し、名義人へ郵送」という4つのステップを踏むことで完了となります。
相続登記に必要な書類は他の名義変更よりも多く、後ほど詳しく解説しますのでチェックしてください。
なお、相続登記が終われば翌年度に確定申告を行い相続税が発生していれば納税することになりますが、相続税の申告は相続を知った日から10ヶ月以内と短期間です。
そのため相続が発生する可能性がある場合は司法書士や会計士などの専門家に相談し、迅速に相続登記が進められるよう準備をしておきましょう。
土地名義変更に必要な書類
相続が原因で土地の名義変更をする場合、次の必要書類を準備することになります。
- 戸籍謄本、除籍、改製原戸籍など被相続人の出生から死亡までの経緯が分かる書類
- 被相続人の住民票の除票、戸籍の附票など死亡した所在地が分かる書類
- 相続不動産の固定資産税証明書
- 相続人全員の戸籍
- 遺産分割協議書
- 相続人全員の印鑑証明書
- 相続人全員の住民票
法務局に行くと相続時に用意すべきチェックリストを入手することができますが、上記の内容が記載されています。
遺産分割協議書には相続人全員が署名押印する必要がありますが実印で押印する必要があり、陰影は印鑑証明書と合致していなければなりません。
万が一異なる場合は遺産分割協議書を作成しなおすことになるため、先に印鑑証明書と所有している印鑑の陰影が合致していることを確認してから押印することをおすすめします。
なお、相続以外が原因で名義変更する場合は次の書類を準備しましょう。
- 売買:売買契約書、売主と買主の身分証明書、印鑑証明書、住民票
- 贈与:贈与契約書、贈与者と受贈者の身分証明書、印鑑証明書、住民票
- 離婚:離婚協議書もしくは離婚調停調書
土地名義変更に必要な費用
名義変更には「必要書類を集める費用」「登録免許税」「司法書士への報酬」があり、必要書類を集める費用は法定相続人の数や被相続人の身分行為、本籍地の移動によって変動しますがおおむね5,000円前後かかるケースが多いようです。
登録免許税は課税額に0.4%の税率を掛け合わせて計算することができ、課税額1,000万円の土地であれば登録免許税は4万円です。
課税額は固定資産税台帳や固定資産税納付書で確認することができることから、生前支払っていた納付が残っていないか探してみましょう。
最後に司法書士への報酬ですが地域や相続財産の規模、工数によって変動するものの、日本司法書士連合会アンケートによると6〜7万円が相場だそうです。
【参考サイト:日本司法書士会連合会アンケート】
土地名義変更に必要な期間
必要書類を準備して登記申請書を作成し、不備がなければ申請から登記完了まで8〜11日で登録が完了します。
書類の記載ミスや添付書類の不足があれば補正指示により処理が止まりますが、指示された内容を修正すればすぐに処理が再開されます。
ただし相続登記は法務局に申請するよりも前に遺産分割協議や必要書類の準備などに時間がかかってしまい、数ヶ月かかるケースも少なくありません。
このことからも相続人全員で協力しスムーズに相続できるよう進めることが大事といえるでしょう。
土地名義変更の注意点
土地を名義変更する際には変更の原因にかかわらず注意点があり、知らずに名義変更することで大きな失敗に繋がることもあります。
場合によっては名義変更によって所有権を得た土地をすぐに売却することになったり、税金の追徴課税を受けることもあります。
また登記に必要な関係者を正しく把握しなければ名義変更すらできないこともあります。
この章では名義変更の注意点について解説しますので、こうした失敗を避けるためにも事前に確認しておきましょう。
かかる税金を計算する
相続した場合は相続税、贈与を受けた場合は贈与税、売買によって土地の所有権を得た場合は不動産取得税がかかることがあります。
これらの税金がかかるかどうか、かかる場合はどのくらいの税額になるのかは事前に知っておく必要があり、高額になる場合は相続放棄するなどの対策を検討することになります。
ただし税額計算や税金の提示など一般的なアドバイスを超えた提案は会計士や税理士のみでできる業務となっており、資格を所有していない不動産会社では提案を受けることができません。
そのため自分で計算するか会計士や税理士に予約を取り、相談する必要があることを覚えておきましょう。
必要な書類の漏れに注意する
相続が原因で名義変更する場合、被相続人や名義人の状況によっては多くの書類を用意することになります。
法務局に提出してから書類漏れがあり指摘を受けてしまうとその間処理がストップしてしまうため、その結果相続登記が遅れてしまいます。
また多くの書類は平日でなければ取得できないため有休を取って1日で完了させてしまう人も多いですが、そのためには確実に取得できるようチェックリストを作成しておくことがポイントです。
1人で難しい場合は相続人全員で協力する必要もあるため、書類の不備や漏れがないよう何度も確認することが大切です。
登記権利者と義務者の立ち会いが必要
土地の名義変更の手続きを相続以外の原因で実施する場合は登記権利者と義務者が全員立会う必要があり、1人でも欠席すれば登記できないという注意点があります。
ただし離婚のようにお互いが顔を合わせたくないケースや相続人が遠方にいてどうしても出席できない場合は司法書士に委任状を渡し、代理人として登記申請してもらう方法もあります。
そのため参加の有無はなるべく早い段階で意思決定し、委任状を使って司法書士を代理人とする場合は速やかに委任状へ書名押印する必要があるでしょう。
申請が通った後に訂正するのは難しい
名義変更の申請中であれば「補正」という形で何度もやり直しすることができ、比較的簡単に訂正することができますが一度申請が受理されてしまうと訂正は非常に難しくなります。
なぜなら名義変更は相続や贈与などの原因に合わせて受理されるからであり、後から訂正するためには「なぜ訂正するのか」を説明する必要があるからです。
たとえば土地面積や名義人が間違っていたのであれば「錯誤」や「遺漏」などを証明する書類を用意することになり、持分を変更するのであれば利害関係のある関係者全員の承諾を証明する書類も必要です。
内容によっては遺産分割協議を最初からやり直すことになるほど膨大な工数がかかってしまい、司法書士への報酬も増えてしまいます。
名義変更にはこのような注意点があるため内容に問題ないか関係する親族全員で確認し、問題ないことを全員が合意した上で申請することが重要です。
不要な土地を手放す方法
土地活用しやすい立地や形状の土地を相続したのであれば問題ありませんが、そうではない場合は固定資産税や都市計画税といったランニングコストがただかかってしまう財産になってしまいます。
さらに害虫や害獣が発生しないよう草むしりをする手間もかかってしまうことから、本当に相続していい土地かどうか見極めることも大事です。
この章では不要な土地を手放す方法について解説します。
相続放棄する
不要な土地の管理で悩みたくないのであれば、相続放棄がもっとも手間がかからない方法といえるでしょう。
相続放棄とは法定相続人として相続財産の権利を全て放棄することを主張することで、被相続人の財産を一切相続しないことになります。
これにより活用方法のない土地を相続することもなくなるため、固定資産税などの支払いを管理する手間からも解放されます。
相続放棄をするための具体的なステップは次のようになります。
- 被相続人の戸籍謄本、住民票や戸籍の附票、相続人の戸籍謄本を準備する
- 上記必要書類と相続放棄申述書を裁判所に提出
- 裁判所から通達された照会書に必要事項を記入して返送する
- 相続放棄申述受理通知書が届いた時点で相続放棄完了となる
ただし一度放棄してしまうと撤回することはできない上に子どもや孫も相続放棄したことになり、代襲相続の権利も失ってしまいます。
そのため、相続放棄が最適な選択肢かどうかは慎重に検討し判断することが大切です。
国や自治体に寄付する
不要な土地を相続してしまった場合、「相続土地国庫帰属制度」という方法がおすすめです。
「相続土地国庫帰属制度」は相続や遺贈によって宅地や田畑、森林などの土地の所有権を相続した人が土地を手放して国に引き渡すことができる新しい制度です。
土地1筆につき14,000円の審査手数料と10年分の土地管理費用として20万円を支払うことになりますが、長期間管理することを考えると得になるケースも多いでしょう。
この制度を利用する際には申請のタイミングと審査のタイミングで却下されるケースがあり、次のような土地が該当する可能性があります。
申請の段階で却下となる土地 |
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該当すると判断された場合に不承認となる土地 |
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申請を受けるステップとして次のような書類を用意する必要もあるため、事前に確認しておきましょう。
法務局へ相談するタイミング |
チェックシート 土地の状況等が分かる資料や写真 |
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相談後作成する書類 |
承認申請に係る土地の位置及び範囲を明らかにする図面 承認申請に係る土地及び当該土地に隣接する土地との境界点を明らかにする写真 承認申請に係る土地の形状を明らかにする写真 申請者の印鑑証明書 固定資産税評価額証明書(任意) 承認申請土地の境界等に関する資料(任意) 現地案内図(任意) その他相談時に提出を求められた資料 |
【参考サイト:相続した土地を手放したいときの「相続土地国庫帰属制度」 | 政府広報オンライン】
関連記事:相続土地国庫帰属制度とは?概要・メリット・手続きの流れなどを解説
売却する
相続放棄は相続財産全てを放棄することになるため難しいケースも多く、土地によっては国や自治体に寄贈できないこともあります。
しかし有効活用しないまま土地を放置していると維持費と工数がかかるばかりか、不法投棄されるリスクや火災や悪臭が発生するリスクなどを抱えることになってしまいます。近隣住民に被害が出て、損害賠償を請求されることもあり得ます。
このようなリスクを抱えないためにも、活用できない土地を所有してしまった場合は売却する方法がないか検討してみましょう。
不動産売却は不動産会社に査定を依頼し、査定額を確認して売却価格を設定することになります。
査定依頼を不動産会社が受けてくれたり査定額がゼロではない限り売却できるチャンスがあるといえることから、不要な土地を相続した時点で複数の不動産会社に査定を依頼することをおすすめします。
ただし土地の売却は立地や競合物件の状況、前面道路の広さなどによって販売が長期化するケースも多く、特に市街化調整区域の田畑や訳あり物件などは買い手が見つかりにくいとされています。
そこで仲介ではなく不動産買取を選択し、不動産会社が買主となって売買契約を締結する方法がおすすめです。
この方法であればどのような土地であっても買取専門業者であれば買取してくれる上に現地立会や仲介手数料もかかりません。
さらに測量や草むしりをすることなく現況のまま引渡しできるというメリットもあります。
このように、どんな土地でも売却によって処分できる可能性はあるということを知っておきましょう。
まとめ
土地の名義変更は所有権を確保するという意味で必ず実施すべきといえますが、相続や贈与、離婚など名義変更する原因によって準備する書類と費用が大きく変わるため事前に確認しておくことが大切です。
相続によって名義変更するためには法定相続人全員で協議し合意した内容で登記申請する必要があります。
つまり、相続人の数と遺産分割の内容によっては共同名義になるケースもあり、その場合は関係者全員で申請をすることになりますが予定が合わない権利者がいたり権利者同士が顔を合わせたなくない場合も少なくありません。
そのような場合は司法書士に委任状を渡すことで代理人として参加できるため、事前に参加する人数と権利者を確認しておきましょう。
また名義変更した土地が有効活用できないことが分かっている場合は相続放棄によって維持費の支払いと管理工数から開放されることができますが、相続放棄できずに取得してしまった場合は国や自治体に帰属させるか売却してしまうのがおすすめです。
土地を取得し名義変更したことによって思わぬトラブルに巻き込まれないよう、名義変更するメリットやデメリット、費用や流れなどは正しく理解しておきましょう。