2025年建築基準法改正で再建築不可物件のリフォームや売却はどうなる?4号特例縮小の背景や対策を解説
2025年に建築基準法が改正され、リフォームやリノベーション、売却に大きく影響すると言われています。
そのため、再建築ができない建物を保有している売主は注意が必要です。
そこで、この記事では改正建築基準法について改正後の変更点や法改正のポイント、おすすめの対処方法について徹底解説します。
違法建築の戸建てや敷地の接道が2m未満といった再建築不可物件は特に大きな影響を受けることから、こうした物件を保有しているオーナーは参考にしてください。
- 建築基準法上の再建築不可物件とは
- 2025年から再建築不可物件のリフォームができなくなる理由
- 再建築不可物件の対処方法
目次
2025年から再建築不可物件のリフォームができなくなる?
2025年に基準法が改正されますが、これにより建て替えや増改築と同様にリフォームにおいても実施する場合は建築申請と建築確認が必要となります。
つまり、これまでのように建築物を自由に模様替えしたり改修や改築といった大規模な工事をすることができなくなるといえます。
これによりリフォーム費用が増加し、自由にリフォームができなくなるという注意点があります。
特に再建築不可物件はこれまで活用するためにはリフォームしかないとされていたため、影響は大きいです。
再建築不可物件とは
再建築不可物件とは、容積率に対して延べ面積がオーバーしていたり土地に面している道路の幅が2m未満であったりする物件のことで、「訳あり物件」と呼ばれることもあります。
こうした物件は現況のままでは建築基準法の観点から建築可能ではないため、何かしらの改善をしなければ建築できないことになります。
近年こうした住宅が増加しており倒壊のリスクが高い空き家になっていることもあるため、国土交通省としても対策を進めています。
再建築不可物件でもリフォームできる理由
再建築不可物件でもリフォームは可能となるケースがあり、代表的な例として屋根や家屋の修繕や増築が該当します。
なぜならこうした工事は申請が不要となり、大規模修繕と見なされない限りは建築許可の審査を受ける必要がないからです。
また、リフォームやリノベーションであれば道幅を拡張するセットバックも外壁後退も必要ありません。
このような理由から、築年数の古い再建築不可物件は買取業者が買取し、リフォームして再販売する方法が有効とされてきました。
建築基準法の4号特例とは
今回の建築基準法改正による影響を解説する上で、「建築基準法の4号特例」は重要なポイントとなります。
この特例は建築確認の対象となる木造住宅等の小規模建築物において、建築士が設計を行う場合には構造関係規定等の審査が省略される制度となっています。
これにより4号特例を利用することで多くの住宅がリフォームすることができ、それにともない売却も容易となるケースが多くありました。
しかし、今回の法改正により4号特例が縮小となることが決定されています。
2025年の建築基準法改正で4号特例が縮小される
2025年の建築基準法改正では、4号特例の縮小措置がポイントです。
2022年6月に「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律」が公布されており、これにともなって全ての建築物は省エネ基準が原則義務付けられることとなっています。
この法律に関連付ける流れで建築基準法が改正されることになり、その結果4号特例が縮小されることになりました。
これについてこの章で詳しく解説しますので、参考にしてください。
【参考サイト:国土交通省:4号特例が変わります】
「建築確認・検査」「審査省略制度」の対象範囲が変わる
建築基準法には「4号建築物」という建築基準法第6条第1項第4号に該当する建築物があり、木造2階建てと木造平屋建て等が該当していました。
これらの建造物を都市計画区域等内に建築する際には建築確認と検査が必要となっていましたが、審査省略の制度も該当させることが可能でした。
今回の改正によりこの4号建築物が「新2号建築物」と「新3号建築物」に分かれることになり、次のような特徴を有することになります。
建築物 | 内容 |
---|---|
新2号建築物 | 改正法6条第1項第2号に該当する建築物のことであり、木造2階建てもしくは延床200㎡を超える木造平屋建てが対象。 この建築物は全ての地域で建築確認と検査が必要となり、審査省略制度の対象外となる。 |
新3号建築物 | 改正法6条第1項第3号に該当する建築物のことであり、都市計画区域等内には建築確認と検査が必要となる。 ただし、審査省略制度の適用は可能。 |
このように、これまでの4号建築物が細分化されることで審査が厳しくなるケースが増加することになり、その結果リフォームの許可を得ることができないことも考えられます。
構造関係規定等の図書・省エネ関連の図書も新たに提出が必要になる
建築基準法の改定によって構造関係規定等の図書・省エネ関連の図書も新たに提出が必要になります。
改正前は確認申請書と設計図書のみとなっており、さらに一部の図書は省略可能でした。
しかし今回の法改正によって新2号建築物は構造関係規定等の図書と省エネ関係の図書を追加で提出することに変更となっています。
さらに国土交通省の公布文書には「今後、建築基準法施行規定において、申請に必要な図書の種類と明示すべき事項を規定する予定です。」という記載があることから、より細かく書類を用意しなければならない可能性もあるといえます。
4号特例が縮小される理由
不動産のリフォームや売却に大きな影響を与える2025年の建築基準法改正ですが、特に4号特例の縮小は不動産を所有するオーナーにとって他人事ではありません。
そのため、活用していない空き家等を保有しているオーナーはそもそも4号特例が何故縮小されることになったのかについて、知っておく必要があります。
そこで、この章では4号特例が縮小されることになった理由について解説します。
省エネ基準の厳格化のため
大きな理由の1つに、2022年6月に公布された「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律」があります。
日本はエネルギー資源が少なく、石油や石炭を輸入することでエネルギーを賄っているのが現状です。
そのためよりエネルギー効率の良い建造物を建築することで将来のエネルギー問題を解決し、さらに環境問題にも取り組む施策が必須といえます。
この法律はこうした日本が直面しているエネルギー問題を解決する方法の一つとして施行されており、これにともなってこれまで審査不要としていた小規模の住宅についても検査を行い、省エネ基準を満たすことを義務付けることとなりました。
こうした理由から4号特例が縮小されることになり、省エネに特化したリフォームやリノベーションの検討が2025年以降必須になるといえます。
【参考サイト:脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律(令和4年法律第69号)について – 国土交通省】
倒壊リスクの回避のため
もう一つの理由として、有効活用されていない家屋を放置した場合の倒壊リスクがあります。
国土交通省の調査によると、令和元年時点で腐敗・破損状態にある空き家は全体の55%になったそうです。
つまり半分以上の空き家は倒壊のリスクを抱えているということになり、こうした空き家の隣地は安心して暮らすことができない状況となっています。
関連記事:空き家が倒壊した時は所有者の責任?リスク回避の方法も解説
また、こうした空き家は今後も増加することが予測されることから、リフォームをする場合は安全性が担保された工事になることを義務付ける必要があります。
そのため4号特例を分割し、構造と延床面積に応じて申請することに変更となりました。
【参考サイト:国土交通省:令和元年空き家所有者実態調査 集計結果】
4号特例縮小の再建築不可物件への影響
4号特例を縮小することで省エネ基準を満たした住宅が増加し、倒壊リスクのある住宅を減らすことに繋がることが分かりましたが、この法改正は再建築不可物件にどう影響するのかについて知っておくべきです。
この章では改正建築基準法のメリット・デメリットについて解説します。
再建築不可物件のリフォームがしづらくなる
これまで再建築不可物件はリフォームすることで活用する方法を模索できましたが、建築申請や建築確認が必要となると軽微な変更であってもリフォーム費用が高くなってしまいます。
さらに申請が許可されなければリフォームすることができないことから、着工タイミングが遅くなってしまうという点もデメリットです。
そのため、リフォームをして再建築不可物件を有効活用するのであれば2024年度中がおすすめです。
関連記事:再建築不可物件が建て替え可能に?再建築を可能にする43条「但し書き」道路とは?
再建築不可物件の売却がより難しくなる
再建築不可物件は居住用財産を探している一般的な買主にとってリスクが高いことから、そもそも売却は難しいとされていました。
そういった状況であっても「リフォームして使えるなら欲しい」という反響もありましたが、法改正によってリフォームの難易度が高くなってしまうとさらに反響数が減ってしまうことになります。
つまり、リフォームにしろ売却にしろ法改正によって再建築不可物件の活用や処理の選択肢が限定される可能性が高いといえます。
再建築不可物件はどうするべき?
建築基準法の改正は再建築不可物件へ大きく影響することから2024年以内にリフォームするか処分してしまうことがおすすめですが、できなかった場合のケースも考えておくべきです。
この章では2025年度以降も再建築不可物件を所有する予定のある人向けに、対応方法を紹介します。
接道義務を満たすようにする
もっともシンプルな解決策として、再建築不可物件を「再建築可能物件」に変えてしまうという方法があります。
たとえば再建築不可物件の代表的なケースである接道義務違反は、隣地の敷地を一部購入することで解消が可能です。
建物を建築する場合は敷地と道路が最低2m接面していなければならないというルールがありますが、建築基準法が制定されるよりも前から存在している街では2m未満の接道も多いです。
そこで、隣地から足りない分だけの面積を購入することで接道要件をクリアし、建築可能にするのが一般的な解決策とされています。
ただし、この方法は隣地にとってメリットがないケースも多く、うまくまとまるかは隣地の状況と交渉次第だといえます。
そのため接道義務を満たすためには不動産会社に相談し、直接隣地に相談するのではなくプロを交えて交渉することをおすすめします。
関連記事:再建築不可物件が建て替え可能に?再建築を可能にする43条「但し書き」道路とは?
売却する
再建築不可物件は買い手にとって資産価値が担保できないという点や金融機関の融資を得られないという点がデメリットとなり、検討物件の候補から外れやすいです。
さらに今回の法改正によってリフォームが容易に実施できなくなることから、再建築不可物件がおかれた環境はさらに厳しくなるといえます。
しかし、それでも再建築不可物件は売却するという方法を検討すべきです。
なぜなら有効活用していない再建築不可物件を保有していると維持管理に費用がかかってしまい、かといって放置していると倒壊リスクが高まってしまいます。
また、倒壊リスクが高まると市区町村から「特定空き家」に認定されてしまうことがあり、認定されてしまうと解体命令や固定資産税の税制優遇撤廃といった勧告を受けることも考えられます。
関連記事:空き家放置で増税される?固定資産税が6倍になる理由と対策を解説
このように、再建築不可物件を活用せずに保有しておくことはリスクを抱えることになります。
そこで、外国人投資家向けに「投資用物件」として公開し、現金購入によって売却をまとめる方法がおすすめです。
こうした投資家は1,000万円以下であれば融資を組まず現金購入を検討することから、再建築不可物件であっても売買が成立する可能性が高くなります。
さらに買取業者にも相談し、買取価格を把握しておくことで売却できる最低ラインを見据えた売却プランを立てることが可能となります。
ただし、再建築不可物件はなるべく早く売却した方が維持管理や経年劣化の影響を小さくできるため、スピーディーに売却したい人は買取業者への買取をメインに検討してみるのも一つです。
関連記事:【目的別】空き家買取業者20選!相続・訳あり・スピード・不用品回収に対応するならどこ?
まとめ
2022年から省エネ住宅の普及が本格化しており、それにともなって2025年には建築基準法が改正されます。
この影響によってこれまで不要だったリフォームの建築申請や許可が必要となり、さらに省エネ基準のクリアが義務化されることになります。
つまり、2025年以降はこれまでよりもリフォームがしにくい状況になるといえます。
この中でも再建築不可物件への影響は大きく、リフォームだけでなく売却ができなくなるという可能性も考えられます。
そのため、再建築不可物件を所有しているオーナーは2024年度中にリフォームや売却を完了させることがおすすめです。
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